住まいの“かがくぶっしつ” - 殺虫剤・防虫剤(その2) 

防虫剤の成分である「パラジクロロベンゼン」は、シックハウス対策の中で室内空気濃度の指針値が0.04ppm(25℃換算値)と決められました。部屋の空気に含まれるパラジクロロベンゼンの濃度が0.04ppmより少なければ、人の健康に影響が出る可能性は低いという目安の値です。実際の防虫剤の量がどのくらいかということは、使う場所や気温によって濃度が変わるため簡単には求められません。しかし、指針値は“この濃度より多くならないようにしましょう ”という目安の値ですから、多量に使うと問題がおこる可能性が高いということになります。気温が高くなれば放散量が増え、濃度が上がりますので夏場の使用には注意が必要です。この指針値はパラジクロロベンゼンの有害性のデータに基づいて定められました。では、どういったデータをもとに考えられたのでしょうか。

化学物質が人の健康や環境に悪い影響を及ぼす可能性がどのくらいあるのかということについては「環境リスク」という共通のモノサシではかります。環境リスクは「有害性×暴露量」で表されます。悪影響が出ないようにするには、「暴露量」を少なくしたり「有害性」の低いものを使ったりしてリスクを小さくすることが大切です。「暴露量」は呼吸や飲食、皮膚接触などでどのくらいの量に接していたかという値で、実際の状況によって変わってきます。「有害性」は「沸点(沸騰する温度)」のように物質がもともと持っている性質です。これは1つの性質ではなく、影響が出るまでにどれくらいの時間がかかるか、どのような影響を及ぼすかによってさまざまな性質があります。よく耳にする「発ガン性」というのもその中の1つです。個々の評価では動物実験などが行われていて、その結果は国際的な機関から公開されています。有害性はモノが持つ性質ですから、程度の差はあっても安全なモノと有害なモノの2つにわけることはできません。有害性の程度と暴露量から、安全な状態と有害な状態を判断するということになります。ですから、有害性の程度が高いものは状況に応じた量の規制が必要になるのです。

また、パラジクロロベンゼンは2001年から施行されたPRTR法の指定物質です。PRTR(環境汚染物質排出移動登録制度)というのは、毎年どんな化学物質がどこからどれだけ排出されているかを知るためのしくみとしてつくられました。これまでの規制だけでは対応できない化学物質の問題に社会全体で取り組むための制度です。指定物質には有害性の程度や生産量などをふまえて、適切に管理する必要のある物質(約450種類)が指定されています。