住まいの“かがくぶっしつ”】 - 断熱材(その1) 

住宅建設に多く使われる材料として「断熱材」があります。内装材のように直接肌に触れる部分には使われませんが、アスベスト(石綿)の問題があったように健康被害について注目されることのある材料です。表1に断熱材を素材・材質別に分けたものを示します。

今回はこのうち無機の繊維質材料についてお話しましょう。有機・無機の区別は前回お話したように命あるものが創り出す“有機”化合物に対して“無機”化合物という言い方がされます。発ガン性(IARC分類)「1:人に対する発ガン性に十分なデータがある」に分類されるアスベストは天然鉱物繊維で、非常に細く(0.03μm~)しなやかな性質を持ちます。これに対し、グラスウールは溶融させたガラスを、ロックウール(岩綿)は溶融させた鉄鋼スラグなどの鉱物を遠心力などで吹き飛ばして繊維状にした人造鉱物繊維です。これらは比較的太く(3~10μm)折れやすい繊維です。人が吸い込んだときに肺まで到達するサイズは直径3μm以下、長さ9μm以下と定義され、細長い針状のものほど体内に留まる可能性が高くなり健康被害が出るといわれています。グラスウール、ロックウールの発ガン性は2001年10月の再評価会議で「3:人に対する発ガン性は分類できない」とされました。発ガン性の評価はWHOの付属機関であるIARCで定性的にランク付けされていて、人に対する疫学的評価や動物実験の結果などをもとに決められています。再評価以前、グラスウールは「2B:人に対して発ガン性の可能性がある」に分類されていましたが、データの見直しなどでこのように評価が変わることもあります。安全性の評価は現在進行形で進められているものであることを覚えておいてください。一方、繊維に触れるとチクチクすることもあり、現場でのカットなど繊維の飛散が問題になります。繊維は飛散させないよう注意しましょう。

いずれにしても、その材料の性質をきちんと知って使うことが一番大切なことですね。