住まいを“かがく”する - はじめに 

住まいをつくるには、いろいろな材料、建材が必要です。昔は家の骨格部分には木が使われ、壁・屋根など皮膚の部分には土や木の皮・植物が使われるなど、私たちの身のまわりにある自然の恵みを利用して、住まいをつくってきました。

工業が発達し、生活が豊かになるにつれて、「快適性」をキーワードにして、住まいに要求されるものが増え、それを達成する手段として、多くの化学物質を使った新建材といわれるものが開発されました。その代償として、たくさんの化学物質に暴露し、「シックハウス症候群」に悩む人たちも増えてきました。

一方、地球規模では地核の活動期に入り、大きな地震が近い将来起こるであろうと言われるこの時期、建築の構造や耐震性能をなおざりにするわけにはいきません。そして、地球環境を守るためには、少ないエネルギーで効率よく、室内の温度を快適なラインで達成しようとすると、断熱性能や気密性についても、ないがしろにはできません。

私たちの身体や財産を守り、環境を破壊することなく住まいをつくるのにはどうしたらいいのか、そしてコストとの兼ね合いはどうするのか、私たち建築に携わる者としては、色々な建材を選ぶにあたって悩むところです。

今回のこのシリーズでは、身体への影響・環境への負荷なども含め、ひとつひとつの建材も含め、住まい全般について考えていきたいと思っています。