住まいを“かがく”する - 断熱 

今回は「断熱」を取り上げます。

「断熱効果を上げたい」とか「断熱性能の良い断熱材はどれですか」といった声を聞くことがありますが、そもそも断熱は何故必要なのでしょうか?

一つは、屋外の不快な温度による影響を室内温度に与えないようにするため、もう一つは室内の快適温度を逃がさないようにするという目的があります。そこで、家を断熱材と呼ばれる熱を通しにくい材料でくるんでしまうことになるのですが、すき間があると熱が通り抜けてしまうので、その点では「気密性」が重視されることになります。そうかといってやみくもに気密性を上げただけでは、魔法瓶の中で暮らしている状態になり、かえって室内環境が悪化するので、計画的な換気が必須条件になります。

シックハウスの問題が取沙汰されるようになって、現在建築基準法では住宅における換気装置の設置を義務付けています。断熱効果を高めるために住まいの気密性を上げ、そのため24時間換気扇を回し続け、電気を消費し続ける・・・?

何かおかしくはないでしょうか?

本来夏が蒸し暑いわが国では、住まいの中に風を通しての生活が伝統的に行われてきました。時代の変遷とともに、住まいに求められるものも変わってきたのかもしれません。もちろん気密性はどうでもいいということではありません。気密性を高めた場合に必ず必要になる換気のとり方として、機械だけに頼るのではなく窓の位置や間取りなどで風の通り道を作るという住まい本来の考え方もあるのでは・・ということです。

断熱性能は快適な住まいを作るうえで重要な要素とは思いますが、どこまでの性能を求める必要があるのかについては、家を建てる場所やその土地の気候、自分がどのような生活をしたいのかを考慮して、もう一度考えてみてはどうでしょうか。

重要なのはきちんと施工することにあります。断熱材を正しく取付けなかったために、気が付かないうちに壁内で結露が起こっていた・・・という状況は最低限避けないといけません。