シックハウス - 新聞記事より (2000/7/28 朝日新聞 夕刊) 

シックハウス。
この言葉も広く知られるようになってきました。ただ、「何が原因なのか、その認識にズレがあるようです」と話すのは、健康住宅に詳しい藤田佐枝子さん。藤田さんが主宰する(有)ホームアイが実施した「住まいと環境に関する調査」の結果を見ながら、話してもらいました。

住まいの建材や接着剤、塗料などに含まれる、ホルムアルデヒドなどの有害物質が原因と考えられているシックハウス。目・鼻・のどの異常、あるいは頭痛や体のだるさなどの様々な症状との関連が疑われている、室内の空気汚染です。いわゆるアトピーの原因の一つとも言われています。

認識

今回の調査では、まず、「シックハウスを知っているかどうか」を聞きました。

結果は、「話に聞いて不安に思っている」が36.8%で最多。「自分の家がシックハウスでないか心配」している人が7.1%、はっきりと「シックハウスだと思う」と考えている人も1.6%ありました。以上の三つを合わせた割合は、年代別に見ると、子育てをしている場合が多い「30代」が52.5%と半数を超えて最も多く、関心の高さをうかがわせます。

一方、「シックハウスのことはまったく知らない」人が27.9%、「シックハウスは知ってはいるが無関係」という人も26.6%にのぼっています。この傾向は特に五十~六十代以上に顕著で、「六十代以上」では、「無関係」が37.0%、「まったく知らない」では43.5%と4割を超える数字が出ています。

原因

次に、シックハウスの原因についてたずねました(複数回答)。

1位は「建材や工事に使われる接着剤」で64.1%。そして、「塗料」54.1%、「壁紙」44.6%と続きます。これらの項目は、シックハウスが取りざたされるようになった当初からのものです。現在では、大手の建材メーカーやハウスメーカーをはじめとして、おおむね対策が講じられています。

もちろん、重要なチェック項目であることに変わりはありません。しかし、最近の注目は、今回の調査では低かった「家具」(10.8%)や「システムキッチンなどの住宅設備」(5.8%)などに移っています。使用されている接着剤などとシックハウスの関連が指摘されています。

また、これよりも認知度は高いのですが、「防虫処理・防虫シート」「床下のシロアリ駆除」などとシックハウスの関連もあまり知られていないようです。たとえば、アトピー性皮膚炎を解消しようと、自然素材を使ってリフォームした家の例ですが、リフォーム後、入院することになってしまいました。調べて見ると、床下のシロアリ駆除を行っており、強制換気していた空気がリビングに逆流していたのです。シックハウスに自然素材が有効なのは確かですが、こうした落とし穴があります。原因についての正しい認識が欠けているといえます。たとえば、ムク材の材木を使っても、有害な接着剤や塗料を使えば意味はないのです。

対策

相談を受けた場合、私がまずアドバイスするのは、入居までに毎日窓を開け放つこと。換気扇も回しっ放しにしておき、とにかく有害物質を外に出すことです。最近はそうした有害物質を吸収するカーペットやカーテンも出回り始めています。もちろん、新築する、あるいはリフォームの時点で、はじめから対策を立てておくほうがいいことは、言うまでもありません。といっても、マンションなどの場合はそうもいきませんから、自衛が必要です。ただ、最近事前に申し出ておくと、対応してくれるケースも多いようです。家具も同じで、新しいものを購入する場合は、有害な接着剤などが含まれていないものを。特に、子供が使うものは、使い古しのほうが安心でしょう。

今回の調査で、回答者自身を含めて家族の中に、何らかのアレルギー症状を持つ人がいるのは、全体の実に69.8%に上っています。もちろん、アレルギー全般について聞いているので、すべてがシックハウスではありません。ただ、室内の空気汚染は、もっとも身近でありながら、「見えない恐怖」なのです。たとえば子供のアトピーも、住まいのせいではないと言い切れません。シックハウスは、家の部材や設備の問題だけではなく、暮らしのほうの問題といえます。合理性や機能性の追及に重きが置かれる現状に対して、安全性・健康面から見直しするべきではないかと思います。それは、広く環境問題を意識したものになるでしょう。実際、そうした住まい作りに、メーカーも対応してきています。
シックハウス問題から見えてくることは、自分たちの暮らしを守る、言ってしまえばごくあたりまえのことだと思うのですが、いかがでしょうか。