既存を活かしたリフォーム

 2018.1.20

30年前の新築時に基本計画で関わらせていただいた木造2階建ての住宅です。お施主様だったご両親が亡くなられて、娘さんのご家族が暮らすことになり、暮らしやすいようにリフォームしたいと連絡をいただきました。当時、私なりに一番良いと考えた内容で計画しましたが、時間の経過とともに改良したほうが良い箇所が出てきていました。
既存の建物の雰囲気を損なうことなく、少し使いづらいと思われる個所を手直しする形でリフォームしました。ポイントは、設備の入れ替えとバリアフリーです。
[トイレ]
もともと広めに造ってありましたが、新築当時は床の仕上げにタイルを希望されていたので、廊下より一段下がった仕上げとしていました。

既存のトイレ

今回は床段差を無くし、開き戸だった扉を2枚引き戸に変更して開口幅を広くし、開閉しやすくしました。トイレ内部の壁面仕上げのタイルは、全く同じタイルは今となっては存在しないので、デザインとしてのアクセント効果を期待して、色目が同じ系列のモザイクタイルを貼ることにしました。最初から計画して貼ってあったかのような、違和感のない仕上がりになったと喜んでいただきました。

トイレ内部

[浴室]
新築時は埋め込みタイプの浴槽で、座位でも入れるようにと浴槽の横にタイル張りの腰かけ台スペースを設けていましたが、高さが低いこととタイルは冷たくて座りづらいのが問題でした。また、周りをタイルで仕上げているため、またぎの幅が広くて入りづらいということもありました。

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そこで、浴槽を高齢者仕様の浴槽に入れ替えることにしました。腰かけのスペースも付いています。将来シャワーチェアーを使うことを考えて洗い桶置き場のカウンターを取り付けて、水洗カランの位置も変えました。トイレと同じく似たようなタイルでごまかすのではなく、補修個所にはデザイン的に素敵になるように同じ大きさで色の違う3色を選び、職人さんにランダムに貼ってもらいました。こちらも最初からそうであったような、違和感のない仕上がりになったと思っています。

リフォーム後の浴室

[居室]
2階の洋室は収納家具で仕切られていましたが、ご夫婦と娘さんの寝室の2室に分けることになりました。

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床暖房をご要望でしたので、遠赤外線シートを敷き詰めて栗の無垢材で仕上げました。間仕切りはクローゼットと本棚で仕切り、家具置き場のバックには杉の無垢材を貼りました。

娘さん寝室収納棚

[その他]
建具の敷居段差は2階の和室を除いて全て解消しました。

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靴ずりを撤去し建具も既存のドアの下につぎ足しをして、高さを調整しました。

ドアの床段差解消後

今のエアコンを仕込んでいた空調機置き場の半分に暖炉を組み込み、壁のクロスの補修個所に調湿タイルを貼ってアクセントとしました。

暖炉

窓は内窓を取り付け、屋根下の断熱材も性能の良いものに入れ替えて、省エネにも配慮しました。雨水利用のタンクも設置しています。家族の中心が次の世代に移っても、必要最小限でも手を入れながら自分たちにあった暮らしを続けていきたいと考えていただけることは、設計者として非常に嬉しく、ありがたいことと感謝しています。

[DATA]

分類: 戸建リフォーム。 設計/施工: 山本尚・設計工房