森林総合研究所関西支所 保育ルーム見学会 2009年5月23日

見学会 2009.5.23

新型インフルエンザの騒ぎが冷めやらぬ5月23日、森林総合研究所関西支所の見学会を行いました。森林総合研究所は森林・林業・木材産業を総合的に研究する機関で、関西支所は、1947年大阪営林局内に林業試験場大阪支場として創設以来、近畿・中国地方の研究の拠点となっています。この研究機関で働く人の子育て支援のために保育ルーム兼木造実験家屋が建てられることになり、もく(木)の会の藤田が企画し、西野が設計を担当しました。

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当日は、まず研究所内に建てられた保育ルームを見学しました。風致地区のため日本瓦葺きの和風の外観で、土台は国産桧、それ以外の構造材、床・壁・天井の内装材、木製建具は国産の杉を使っています。
室内に入り、設計者の西野から建物の概要説明がありました。子どもたちが触れる床や壁は、体にやさしい杉を使いました。天井は梁を見せて広々とした空間に仕上げ、天井に近い壁はウッドチップで作られた壁紙が貼られています。子どもたちが使うトイレや洗面所にもうまく木が取り入れられていました。
研究員(地域研究監)の黒田さんからは、研究機関には女性研究者がまだまだ少ないこと、病後の子供の保育園登園停止などで仕事との両立に苦労する女性のために,このような保育ルームを作りたかったこと、小さな子どもを持つ男性職員にもこの施設が喜ばれているというようなお話がありました。
最後に保育ルームの暖房器具として採用されたペレットストーブの説明がありました。本当は薪ストーブを入れたかったが、安全を考えてペレットストーブを選択されたとのことです。納入した川上氏よりペレットストーブの現状と暖房能力の話がありました。ペレットストーブは以前に比べると性能も良くなり、基本的には石油ストーブの燃料がペレットに替わったと考えればよいとのこと。しかし、ストーブの単価が高いこと、ペレットの入手先が多くないことが問題。この2点の早急な対策が望まれる、とのことでした。

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保育ルームの見学のあと、標本展示室で黒田さんより講演がありました。関西支所が現在力を入れている分野が「里山の保全・利活用および森林環境システムの開発」で、黒田さんはその中心的な研究監として活動していらっしゃいます。
まず、以前の里山と現在の里山の写真を見て、マツ枯れやナラ枯れが増えていること、その原因となる害虫や病原菌についてのお話がありました。さらに害虫が増えた原因は私たちの生活様式が変わったこと、具体的にいうと木材燃料から化石燃料への変換が原因で,里山の手入れをせずに放置したことにあるとのことでした。
したがって、里山の保全は山の木を適度に使うことが重要であると説明されました。また、里山だけでなく日本の森林の40%を占める人工林も間伐が必要である、そのためには、もっともっと木材を利用しなければならないことを強調されました。黒田さんは子どもたちへの自然学習プログラムの作成にも取り組んでいらっしゃって、世界で起こっている森林破壊(伐採過剰)と,日本で起こっている森林放置による荒廃について,きちんと理解することが大切だとおっしゃっています。
最後に、滋賀県大津市や京都府長岡京市で実験的に行われている,里山の伐採を行って,伐った木を地元の家庭が薪ストーブの燃料に使うという社会実験など興味深いお話も聞くことができました。

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講義の後、研究所内の見本林や実験林を見学しました。正門を入ってすぐの並木はメタセコイアで、かなりの樹高です。そのほか、クヌギやシイなどの広葉樹、マツやスギなどの針葉樹、竹林などもあり種類が豊富です。関西支所は、桓武天皇陵に隣接し、伏見桃山城の武家屋敷などが建っていたところだそうです。普段は見られない研究所奥の伏見桃山城(復元前の)のお堀跡まで案内していただきました。実験林には、マツ枯れ(マツ材線虫病)に抵抗性の木などが植えられ,研究に使用されていました。