ギャラリーきりん舎

 2013.8.17

今回ご紹介するギャラリーは、先々代・先代が綾部市西町にある商店街で営んできた洋品雑貨の店「キリンヤ」が、13年前の商店街の近代化にともなって住宅+園芸店「きりん舎」となり、その後専用住宅の時期を経て娘さん夫妻に引き継がれ、昨年の初夏に「ギャラリーきりん舎」になったものです。

13年前の新築時には京都市の奥に位置する花背の杉材を、柱や梁、床材・枠材・1階の天井兼2階の床などに使いました。

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1階展示スペース

おかあさんが晩年を過ごされたこのすまいは、造園業を営むの娘さん夫妻がつくられた庭と全体の高さを抑えて設計した建物が落ち着いた雰囲気を醸し出しています。この雰囲気を大切にしながら、新しい活動にも適した場所に、というご夫妻の思いを形にしたいと行った改修です。

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床板の様子

住宅部分にあったキッチンや浴室、2ヶ所あったトイレのうちの1ヶ所は取り払って展示スペースにし、1階のお茶の間だった和室はたたみを取り払って杉板に貼り替えました。壁を取って、一続きの展示スペースにしたので、床材の貼り方向がちがうところや、新しい杉板と古い杉板が敷居を介して接するところでは、改修直後は新旧の差が気になるだろうかという思いもありましたが、杞憂に終わりました。

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現しの梁と配線ダクト

すまいだった時から現(あらわ)しにして見えていた梁には、配線ダクトを取り付け、展示作品に応じてスポットライトの位置を変えられるようにしました。しっくい塗りだった壁は汚れの強いところもあったのでしっくいを塗り重ね新しくなりました。

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ギャラリーではアール・ブリュット(生(き)の芸術)と呼ばれる分野の作品だけを紹介しています。専門の美術教育とはかかわりのない感性で作り出される作品は独自の表現です。改修後、3回の企画展が行われましたが、その独自の表現で織りなされる世界には圧倒的な迫力がありました。そのような作品を静かに受け止め、持っている力を際だたせているのは杉の床であったり、しっくいの壁というような素材であるように私には思えます。

京都府綾部市というとなじみのない方も多いでしょうが、グンゼ発祥のこの街には「糸偏」産業の盛んなころに培われた文化があり、街としても興味深いところです。梅雨明けには第4回企画展を行います。ぜひ、一度お出かけください。

ギャラリーきりん舎 http://ayabe-kirinya.com/

[DATA]

分類: 戸建リフォーム。 設計/施工: KS(ケイズ)設計室