蘇った築38年の木造住宅
若いご夫婦が、1人娘と3人で安全で優しい木の家で暮らしたいと考え、まず、中古物件を探す事からスタートされました。そして見つけられたのが、幼稚園が近い木に囲まれた築38年の木造住宅でした。限られた予算の中で、どれだけお二人の希望をかなえられるか?
まずは耐震チェックからです。建築基準法の仕様規定46条はクリアーしているが、許容応力度必要耐力も確保したいと考えて、殆どの床、壁、天井を解体した結果
①基礎の補強
②両筋交いの増加
③すべての柱、梁に金物の補強
④天井にブレース設置
などが必要ということになりました。
リフォームの希望は、次の通りです。
・1Fはワンフロアーのリビングにオープンなキッチンと和室を続ける。
・天井を解体して出てきた梁を見せたい。
・オープンなリビングを確保する為撤去した壁の代わりに、梁を重ねて梁背を高くしそれをΦ240の円柱で受ける。
大工の棟梁が梁を重ねて作り、最後までささえとしておいていた柱を外して、円柱を差し込んだ時、ギャラリーで見られていたご家族から拍手が起こりました。リビングの梁は、ご主人がお休みの日にサンダーで磨いて下さり、壁の漆喰下地の下地塗りは、奥さんと私の仕事です。
和室は天井が杉で壁は土壁。リビング、キッチンの床は杉30mmのフローリングの下にガス床暖房を入れました。
壁は漆喰塗り、天井は木の梁と漆喰塗りです。
ローカは、現状の床の上に楢フローリングを貼りました。
玄関ドアは檜、リビング、ダイニングの建具は杉、トイレ、洗面の建具はフラッシュドアに月桃紙貼りで、キッチン収納、下駄箱、洗面は全て杉で制作しました。
初めて現地で古家を見たとき、築38年のその家はとてもくたびれて、これ以上は働けませんと言っているようでしたが、5ヶ月後、その家は、若い2人の思いをのせて、30年住める家に蘇ることができました。
引越しの日、出来上がったその家で風が吹き抜けるのを感じながら至福の一時を味わいました。感謝です。