祖父・父の住まいを引き継いだ3世代の家

 2014.10.24

戦後建てられた田舎造りの平屋建ての実家には、高齢のご両親が二人でお住まいでした。が、お母様が突然亡くなられ、腰の悪いお父様一人になられたために、近くのマンションに住んでいた息子さんご家族が移り住むことになりました。現状の建物は、今までに増築や改修などがされているようですが、流し台は高さの低いタイル張りで、土間に下りてお風呂・トイレがあるため大変動線が悪く、また、かなり傷んでいました。

DK before①s

タイル張りだったキッチンを

矢印下向き

DK after①s

対面式のシステムキッチンに

 

DK before②s

土間だった部分を

矢印下向き

DK after②s

桧の床で広々と

今回の要望は、「お父様の希望で自分が住み続けてこられた家をできるだけ残してほしい」「水廻りの改修と息子さん家族の個室の増築」ということでした。お父様はご高齢なので、水廻りの配置をあまり変えないように使いやすく、またご夫婦は共働きで忙しくされているので、限られた空間の中で動きやすい動線を検討しました。

既設部分の改修は当初DKを含む水廻りだけでしたが、お父様の寝室はとても寒かったのと耐震性を確保するため筋違いを入れて、床・壁・天井に断熱材を充填し、床組をやり変えて、杉厚板30mmを張ることにしました。床組の工事を始めると、床下の湿気が多かったので。急遽防湿シートを敷いて、土間にコンクリートを打ちました。

みんなが集うDKは以前と同じ位置で改修しましたが、暗い空間だったので、天窓を取り付けることで明るさを確保しました。床は温水式床暖房の上に桧の床材15mmを張り、壁は既調合の漆喰仕上げにしました。

洗面ss  トイレss

洗 面                         トイレ

増築部分のご夫婦の寝室と高校生と小学生高学年お嬢さん二人の個室はあまり広い空間が取れないため、平屋なので天井を高くしロフトを設けました。床には杉の床板厚30mmを張り、壁・天井はクロス(織物・木チップ入紙)仕上げにしました。

子ども室s

子ども部屋

新寝室s

夫婦寝室

玄関が4帖ほどの土間になっていて、そこの雰囲気を残したいというご夫婦の要望もあり、当初既設の建具の高さが低かったので玄関や内玄関の建具は新調する予定でしたが、縦枠を継ぎ足したり傷んでいるものは付け替えたりと古いものを再生させました。継ぎ足した部分は自然塗料を塗って仕上げると今までにない風合いを残すことができました。また、無垢の材で仕上げた改修部分が古いものと調和して違和感のない空間になっています。

内玄関引戸before①s 内玄関引戸 afters

                            古い内玄関              再生した内玄関

工事中、お父様は息子さんのマンションやリハビリの病院に行っていただき、いろいろご不自由をお掛けしましたが、新居に戻られて「世間では古いものを壊して新しいものを建てるのが当たり前やのに、この家を残してくれてありがとう」と喜んでくれたと奥様からお聞きして、本当にうれしく思いました。これから益々、昔から在るこの家に愛着を持って住み続けていただけると思います。