百済の里に若い青年家族が活躍する住まい!
○基本計画の整理から始まりました
奈良県百済は国宝百済寺を中心に古代より渡来人が移り住み、約50戸の世帯数はほぼ昔から変らないそうで、農地に囲まれた静かな美しい村です。
A邸は以前から兼業農家をされて来たお宅です。350坪の宅地に築60年を越える母屋や離れが建ち、農業用倉庫が点在しています。此の度 当主が長男Aさんに引き継がれる事になり、農業用倉庫の一画を若い長男家族のための住宅に建て替えることになりました。
○住宅計画のポイントを2つに絞りました
第1は若いAさんの”これからの活躍に相応しい場”をつくる事。現在東京を拠点としている仕事を将来は関西に広げるための”関西オフィス”として創る。年齢、性別を越え外部の人と交流の起点として”人が集まる所”であること。
第2は4世代~親家族、祖母、Aさん夫婦、子供~の家族のみんなが快適な日常生活を送る上で、母屋、離れ、農業用倉庫等々からこの建物が気持ちの良い機能的な距離関係にあること。
○平面計画
1階は家族、友達、仕事仲間が集まり語らう処。外部からの入り口は3箇所を設けました。①玄関 ②和室
ヒロエン-母屋(親の住まい)・離れ(祖母の住まい) ③土間ダイニング-南の大きな庭
また屋内には3通りの回遊を作り2~30人の集まりにも可能な動線としました。
将来、親と同居のための増築は西側にスペースを確保しました。
2階は家族のフロアーです。本の大好きな夫婦のためにホールを利用した図書コーナー、書斎兼オフィ
ス、寝室、子供室2室です。
各部屋に東・西・南・北から風、光、緑を取りいれました。
1階土間ダイニングは天井にトップライトを入れて、南には 桜の大木の生える大きな庭に開放され、明るくて気持ちの良い、家族の憩いの中心となりました。
○着工から竣工まで
若い夫婦は積極的に計画に参加を希望され、細やかに対応できる工務店を選び、建材、設備の決定、見積の内容等々を一緒に確認して、丁寧に進めました。村の慣習から基礎・電気・ガス・水道工事は村の業者の方にお願い致しました。1階の床はナラの無垢フローリング(自然塗装)、2階の床は杉の無垢フローリング(無塗装)です。施主は家具を持たない主義です。1、2階の押入れ、物入れ、クロ-ゼットの収納方法を充実させ、内部は全て杉の無垢材で作りました。壁、天井はパルプから作った自然派クロス仕上げとしました。
土地の湿気を考えてべた基礎とし、防蟻防腐剤は安全性と持続性を考慮してほう酸系を使用しました。
田植どきになると、Aさんは東京から仲間をつれて田植に帰ってきます。秋にはその稲の収穫に帰ってきます。お土産は新米だとお母様からお聞きしました。ことしも豊作になりますように!
[設計監理:よしの山本設計企画 山本堯子]