北山杉の産地 京北町にて

 2020.9.7

京都市内から北へ約45分、北山杉の産地・京北町に建つ住宅の大規模改修です。いつ頃の建築かはわからなかったのですが、50年以上は経っていると思われる住宅です。若夫婦(現在のご当主夫妻)がこの地に戻って、先代ご夫婦と同居を始める際に水廻りを中心に改修が行われていました。浴室や洗面所などの水廻りを整え、ダイニングキッチンの様式を取り入れています。今回の改修もやはり水廻りを中心に、
①家族が集まる居間・ダイニングを現在のライフスタイルに合うように
②教師として働いている忙しい奥さまが家事をスムーズに行えるように
③高齢になってきた奥様のご両親との同居が始まっても、働きながらの介護という負担が動線としてだけでも最小限ですむようにという3点を主眼にして
④北山杉丸太の生産の傍ら、鮎友釣りアドバイザーとしても活動しているご主人を訪ね来る釣り人の接客スペースとしての場を充実させる
⑤寒さが厳しく積雪もある京北の地ですが、生活の一部である野菜作りなどの作業にも考慮する
という要望もお聞きし、設計が始まりました。
幸いなことに息子さんの住宅を以前に依頼していただいたこともあってその時の設計内容をベースに考えを発展させることができました。

 

現在の生活スタイルに応じたプランニングをするということは大切な改修の目的でしたが、それと同様に家族が健康的な生活を営むための基本的な住宅の性能を整えることも今回の改修にとっては重要な目的でした。         大きく間取りを変えるこの機会に改修部分の外壁はすべて撤去し、壁・床下・天井に現在の省エネ基準に見合う断熱材を入れ、少ないエネルギーで快適に過ごせる家にしました。既存の天窓も有効に使えるように結露対策を行い、外光を居間に取り入れられるようにしました。
構造面では今回改修を行わない場所が多いこともあり、バランスを考える必要がありましたが、脚元の傷んでいた柱を入れ替え、必要なところに補強を加えています。

 

南に面し、居間と外部との間の緩衝地帯となる土間空間、サンルームをつくりました。             接客スペースとして、また野菜の苗などを育てる場所として使われます。天井には杉を貼り、ちょっとした上着や道具を引っ掛けられる実用的な出節の北山杉丸太がこのサンルームのシンボルです。(この写真では鮎釣りの時に使うタモがかけられています)
古くから伝わってきた長持ちやさまざまな道具がインテリアとして飾られ、訪れる釣り人にほっと一息ついてもらえる場を提供しています。

内装には古いベンガラ塗の柱や差鴨居・梁などを活かしながら、新しいデザイン要素として北山杉の小丸太や天然シボ丸太を使いました。家族が集まり調理も楽しむアイランドキッチンの背後には食料や調理器具などを収納するパントリーを配しました。

その一画には奥さまの趣味のコーナーがあり、ミシン掛けなどを忙しい生活の中でいつでも楽しめるようになっています。竣工後お伺いするたびに古い道具がきれいになって、土間や居間で新しい役割を担っているのを見かけます。古い家も道具もそこに住む人の思いで新たな時代に生き続けることができるということを改めて感じています。

   

[DATA]

分類: 戸建リフォーム。 設計/施工: KS(ケイズ)設計室