優しい杉の香りの歯科クリニック

 2021.4.27

今回は、歯科クリニックの増築のご紹介です。
院長であるお父さんの意志を継いだ長女の方が一緒に治療に加わる事になり、患者さんも多く、スタッフも増えたので、診療所を増築されることになりました。プランも決まり模型も出来た時点で、内装にできるだけ多くの自然素材を取り入れ、少しでも患者さんが居心地よくリラックスして治療が受けられるよう、私に内装プランニングの依頼がありました。

 

①入口アプローチ
患者さんの最初の緊張感をなくすため自動ドアには杉の木で作った木のシルエットをはめ込み、開くと扉が横にスライドして隣のガラスにはめ込んだ同じ形の鉄のシルエットと重なるように工夫しました。
夜には八ヶ岳で生まれた吹きガラスのライトが中へと招いてくれます。玄関には杉の靴・スリッパ収納があり、右手に続く杉の引き戸を開けて受付へ。

②受付
受付に入る幅広の引戸は、次女の方のデザインされたガラスの作品がはめ込まれ、このクリニックを見守ってくれているようです。受付のカウンターも杉を貼り、その横の木のシルエットの杉の親子ドアが第二治療室の入り口です。

③第二治療室
合わせ梁や束で支えられた斜めの高い天井には北の高窓から落ち着いた自然光が届き、南北面の杉の棚にセットした上向きの間接照明からも優しいトーンの光が下に届きます。コロナ禍の中、この高い天井はとても気持ちが良いと言っていただきました。

④待合室
長く森で育った龍神杉でソファの骨組みと肘掛けを作り、クッションを乗せました。患者さんが腰掛けられた時、丸く仕上げた肘掛けに是非触れて頂き、龍神の森の優しさを感じて欲しいと製作しました。

 

⑤待合の奥に洗面・トイレ
洗面台も収納も杉で製作し、多目的トイレへの引戸も杉で作りました。トイレの壁面も杉の板を張り、杉の香りを届けられるように。引戸を開けても待合からは便器は見えないように配置して、外からの光だけは待合から感じられるようにしました。

今回の現場は、確認申請も取り直したり、設計でも現場でも大変な局面が何度となくありました。その一つ一つをあきらめず、しかも前向きに解決できたのは、クリニックに来てくださる患者さんやスタッフのことを思い、歯科医師として皆から信頼されていらっしゃるご主人を誇りに思い、後を追う娘さんを応援される奥様の姿でした。そのすべての方が長く過ごされるこの空間を大切に思う“奥様の思い”が「気持ちいいね~」と言っていただけるこの場所を作り上げたのだと確信しています。この建物に関われたことを心から感謝しています。

 

[DATA]

分類: 店舗・施設。 設計/施工: 高橋空間工房