リビングにシンボルツリーを立てたマンション
Sさんは最初、「土地を探している最中だけど、OMソーラー(パッシブソーラーのひとつ)で家を建てたい。土地探しから手伝ってもらえるだろうか?」と事務所に来られました。それから何年かの間、これはと思う物件が見つかると電話をくださって、土地を一緒に見に行ったりしていましたところ、昭和55年に建てられたマンションが、1階で広い専有の庭があること、改装前の状態で購入できるということが気に入って連絡をいただきました。構造図を構造設計の事務所でチェックしてもらい、壁構造で耐震性に問題がないと確認できたので、さっそく全面改装ということになりました。
玄関から居間へと続く感じを斜めの壁で生かし、杉の床・漆喰の壁という自然素材で温かい雰囲気を醸し出そうと計画したのがこの住まいです。漆喰はご主人と奥様が2人で、既に調合された商品である「タナクリーム」を塗られました。床暖房を入れる代わりに杉の厚板33㎜を貼りましたが、この冬の寒さにも有効でした。玄関から居間へとひと間のように続いてはいるけれども、視線を一旦切ることができるように、当初、居間側にタテ格子の小壁を考えていました。現場で「ああでもない」「こうでもない」と格子の打ち合わせをしているとき、シンボルになる木を1本入れたらどうだろうという奥様がアイデアを出され、実現したのが写真の木です。京都の奥、花脊というところからやってきた枝を落としただけの桧です。この木は子どもたちが大好きで、竣工前から天井に手の型が付くくらい何度も登ったり降りたりしていました。
奥様がこだわったのがもう一つ、在来工法での浴室でした。マンションではユニットバスが一般的ですが、1階であることを生かして浴槽の設置高さ(またぐ高さ)が少し高くなりましたが、天井には桧を貼り、壁にはタイルを貼った浴室ができました。マンションの型を崩そうと少し斜めの壁をつくったプランと自然素材がマッチし、楽しい住まいになりました。この家で、もうすぐ1年生になる息子さんと5年生になるお嬢さんがたくさんのお友達と楽しい時間を過ごしてくださることと思っています。