モダンデザインの新築集合住宅に古材風梁と土壁・しっくいをプラスする
新築タウンハウス住宅を入居前に自分達の好みの空間にリフォームしたい。 メンテナンス重視の奥様のご希望で、集合住宅を選択されたのですが、ご主人のイメ ージする空間、イギリスの古民家に見られるような時間の経過を感じさせるどっしりと した梁やしっくいに囲まれた落ち着いたリビングにしたい。又それらを表現するにあたり、 本物の材料を使いたいとご相談を受け、設計をスタートしました。
購入された住宅は白を基調にデザインされ、できるだけ装飾を省いた斬新な住宅です。そこに全く異質な重厚なイメージの梁や土壁をどう違和感なく持ち込むかがまず初めの課題でした。
そこでリビングにもとからあったかのような場所に意匠柱を立たせ、梁を乗せていきました。場所によっては柱や梁が壁や天井から一部見えているような感じに見せるための納まりの工夫をしました。この梁や柱は杉をランダムに削り、塗装には柿渋とべんがらと松煙を混ぜたものを使用することによって、古材のイメージを表現しました。リビングの奥一面には奈良・山の辺の土を使った土壁にしました。土そのものの持つ深い橙色の壁がこの真新しい住居と梁をうまく調和させる働きをしています。梁の裏に間接照明を設置したことで、より一層土の素材感を引き立たせています。残りの壁と天井はしっくいに軽くこてムラを残した感じで仕上げました。
食器棚を取り込んだ収納家具
このリビング奥にキッチンが配置されています。ここにはこれまで使われていた食器棚を取り込んだ収納家具を壁の寸法に合わせて製作しました。食器棚を上下に分け、 空いたスペースを電化製品や配膳のスペースとして使います。新しく製作した部分は塗装 を食器棚の色に近い色にしたので、一体化されて見えます。
寝室
寝室にはこれまで賃貸のマンションを転々とされていたときに購入され、敷かれていた杉のフローリングを既存の床の上に敷きました。
動かないようにするためと端の段差部分をうまく納めるために、廊下からの出入り口には斜めにカットした材で段差を解消し、部屋の中では住まい手のご意見を聞き段差をつけた押さえの材としました。一般的に床材を住まいが変わるたびに持ち運ぶと言うことは難しいのですが、賃貸に住まわれて、置き式で杉のフローリングを楽しまれていたので、この杉のフローリングは3度のお引越しにお付き合いすることができました。
住まい手は完成後、アンティーク家具を買われ、少しずつ自分達の暮らしを創りながら “住むこと”を楽しまれているようです。