杉の木でマンションリフォーム

 2021.11.25

朝日新聞朝刊に掲載された「杉の効果」の記事を見て、連絡をいただいた方の住まいのリフォームです。場所は、奈良市学園前の駅からほど近いマンション。これまで生駒市内の1戸建て賃貸住宅に住まわれていたのですが、この度マンションを購入し引っ越されるご予定とのことでした。
購入されたお宅の間取りは、LDKと和室1間、洋室2間の3LDKで、リビングと和室は、南向きのとても日当たりの良い、そして見晴らしのいい位置にありました。

主たる依頼内容は、娘さんに軽度のアレルギーがあるので新建材などを使わず、出来る限り自然素材をつかった空間にし、居心地のいい場所にしてあげたいとのこと。具体的には、

① 現状和室である場所を娘さんの部屋とする
② LDKと和室は、戸襖で仕切られているが、壁を設けて、扉で出入りできるようにする
③ LDKの音が、出来る限り娘さんの部屋に漏れないようにする。
④ 仕上材は、新建材ではなく杉や漆喰などを使う
⑤ 洋室2間も腰壁だけ杉板を張る
とのことでした。
まず、床に無垢の木を使うことについて検討しました。マンションなので、課題は音の問題です。事前に管理組合より、LL-45等級のクリアーが必須と確認済みでしたが、その場合二重床にする必要が出てきます。私の事務所がマンションで、無垢の木を張るため2重床にしているので、お母様に見ていただき娘さん
に伝えていただいたところ、床が上がってしまうことには抵抗があるとのことでした。そこで今回は、主に奈良県産の材木を取り扱っているもく(木)の会の賛助会員が製造している、直貼りタイプの杉床材を使うこととしました。この床材はLL-45等級の防音性能を有しています。
サンプルを取り寄せ娘さんに確認していただき、張るときの状態をある程度再現した上で暫く手元に置いていただいて、問題ないかどうかテストしました。その結果、特に問題ないようでしたのでこの杉床材を採用することにしました。


例えば、壁の漆喰塗りは自然素材にこだわり、布海苔(ふのり)を炊いて練ったものを現場に持ってきて塗ることにしました。
間仕切り壁には防音のために断熱材を充填することにしました。材料は安全性に配慮して、シックハウスの要因物質を含んでおらず、リサイクルペット樹脂が原料の「パーフェクトバリア」にしました。

娘さんの部屋の押入は、洋服や布団などを収納する多機能収納庫になります。内部の仕上も自然素材にこだわり杉板を張る事とし、とても喜んでいただきました。少し残った材料は、ご主人が自身のクローゼット内部に置いて使われるそうです。


リビングと娘さんの部屋の扉も杉材の框戸に取り替えて、杉や漆喰といった材料をふんだんに使ったことにより、マンションでありながら自然素材を感じられる空間となりました。


完成した部屋をご覧になった娘さんには、とても喜んでいただけたとのことです。住まいは、施主・設計者・施工者の三位一体で造り上げることを再認識し、その楽しさを実感させていただいた現場でした。

 

 

 

 

 

 

 

[DATA]

分類: マンションリフォーム。 設計/施工: 時空工房高橋空間工房