杉・桧を使ったこだわりリフォーム

 2013.7.26

昭和の初期に建てられた住宅を大切に守り、住み続けてこられて、数年前にお風呂をリフォームした施主から、今回は家族が集うLDKのリフォームの依頼でした。台所、茶の間、今の生活では使わない電話室や女中さんの部屋などもあり、小さく部屋が区切られていたので、家事動線が悪く、立ったり座ったりする動きも多かったようです。また、昔の家は土壁だけで断熱材も無く、床板の隙間から床下が見えていて、冬はとても寒かったそうです。

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要望は開放的で明るい広々とした空間にする事と、寒さ対策、そして同居されているお母様が過ごす空間としての和室がほしいという事などでした。
お母様の足が少し不自由ということもあり、床には柔らく足に優しい杉板30mm敷くことにしました。また寒さ対策として床暖房をしたいとの希望もあり、その杉板を暖めるために銅板を敷き詰めた温水の床暖房を採用しました。

キッチン

キッチンの配置についてはいろいろ検討しましたが、お母様も使われるので、今までと同じような使い方ができるように基本的なシンク・ガス台の位置は変えずに、収納・冷蔵庫の位置を変えることで収納量や動線を考え隠すキッチンではなく見せるキッチンにする工夫をしました。キッチンはメーカーのものを選びましたが、ガス台横のカウンター、キッチンからリビングにかけての一体的な収納は桧材で製作したので、明るく統一感のある空間になりました。

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居間

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リビングと和室の調和を考えた障子

また和室はLDKと同じく杉板30㎜を敷き、その上に置き和室『ひとま』で35cm上げました。真ん中だけ掘りコタツのように空けていますが、冬は掘りコタツ仕様でロの字型に、夏はコの字型で動きやすいように置き和室を移動できるような工夫をしています

室内の木製建具は既存の廊下からの見た他の部屋との釣り合いもあるので、出入口は今まで通りの障子で内法高さを1.8mとし、出入口は上部欄間付きにしました。リビングと和室との間の建具は開放したときに一体化した空間となるように、また和室の床が35cm高い事もあり、天井近くまでの高さにしました。ただ、デザインを変わったものにしたいとのことで、徳島の指物師の方にお願いし、曲線を使った柔らかいデザインに仕上げました。

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テーブルを並べたところ

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和室

和室の天井は、施主の希望で高知県の『かなば(※注1)』を使って網代(あじろ:注2)天井を自分たちで編む事になりました。編んだものをどの様に取り付けるかなど試行錯誤の結果、杉板を90cm角程度の板状にし、その上に網代を貼り、それを天井に取り付けて四方桟で切り口を隠しました。テーブルや椅子も杉材で製作しました。

人が集まる時には、ダイニングのテーブルを和室側に移動させる事で和室とダイニングのテーブルを囲むことが出来るようにしています。 施主の要望により、いろんな要素を組み込みましたが、お互いを邪魔することなく落ち着いた空間を演出できたと思います。

  • (※注1) 杉の間伐材を薄くスライスしたもので、高知県馬路村で作られるクラフトの素材。
    名前の由来は木材を削るときに使う鉋刃(かんなば)からきている。
  • (※注2) 杉皮、桧皮、竹の皮などを使って各種の模様に編んだもの。和室の天井や建具などに使われる。