山ノ下のいえ
京都市内を望む嵐山の高台に建つこの家は、照明デザイナーとインテリアデザイナーのご夫妻の住まい+仕事場です。プランを考えるに当たっては、2階から望める比叡山・西山、周囲を囲む竹林や杉林という敷地条件を最大に活かせるようにしました。
日常生活の折々にはこの周囲の景色が楽しめるよう居間やダイニングを2階に、パソコンを使う事務スペースも、デスクワークに疲れた目に豊かな風景が飛び込んでくるように、モデルをつくったり試作品を実験したりする工房スペースとは切り離して2階に設けました。
その居間の上部には「物見台」と呼んでいるはしごで上がるスペースがあります。1帖半ほどの広さですが、「送り火」の日には、ビールを片手に遠くで燃える大文字を、夏の昼下がりには高い窓から抜けていく風を感じながら昼寝をと日常生活をより楽しめるスペースにしました。
また、ご夫妻が計画した間接照明によって、居間・ダイニングの真っ白な和紙クロスを貼った勾配天井から物見台が浮かび上がって、夜にはまた別の表情をみせてくれます。
【間接照明を入れると】
景色や光・風の取り込みにとどまらず、太陽熱を利用したパッシブソーラーシステム「そよ風」を採用することで冬には家全体をあたためヒートショックを小さくできる暖房に、夏にはお湯取りをと、自然の恵みを積極的に活かすことができました。少し小振りな階段を介して事務スペースとつながっている1階の工房は、そのシステムを利用した穏やかな床暖房のエリアになっています。下足で作業するエリアですが、京都の底冷えを解消してくれると思います。
利便性の高い大阪でのマンション生活からこの家での生活に切り換えられたご夫妻は、この家ならではの生活を他の面でも楽しんでおられます。この春にできた宇治田原の「薪クラブ」に参加して里山を守りながら、自宅の薪ストーブの暖かさを楽しむ計画、雨水を利用しての畑作りなどが始まっています。
現在の照明計画は、照明デザイナー・インテリアデザイナーとして、日進月歩で進歩しているLEDと従来の光源の良さの両方を取り入れながらのものですが、試行・実践を重ねて、今後ともどんどん進化していく予定です。ご夫妻のいろいろな思いとともに、この家がどの様に変化していくかとても楽しみです。