シェアスペースを持つ住居
兵庫県西宮市で築45年の小住宅(3階建て)を耐震改修した事例を紹介します。
オーナー住居+香りの優しい杉を販売する工房+建築設計事務所でシェアしています。改修は、第一期(2、3階の木造部分)と第二期(1階の鉄筋コンクリート造部分)に分けて進みました。コロナ禍が続く中、ようやく目標を持って活動ができるようになってきたところです。
「住まいは空気感が気持ち良く、健康で活き活きと活動する原点になるもの。」と考えるオーナーは、これまでの体験から「香りの優しい杉」をたくさん取り入れることが希望でした。又、計画段階から、一般の方にも空間体験をしてもらいたいという思いも語られていました。
改修前は、小割りの部屋が少し暗い印象でした。改装後は、2層の木造部分で可能な限り広がりを確保して、杉の板壁で囲まれた空間を入れ子状に緩く繋げました。この家に庭はありませんが、どのスペースからも公園の緑を望むことができます。
オーナーの言う「香りの優しい杉」とは、天然、又は低温乾燥された杉の魅力をしめす表現です。木造部分は一年を通して湿度はある程度一定で、夏はひんやりと冬はほっこりとした感覚で過ごせます。
1階では、主に杉の板材を販売しますが、ちょっとした木工もできます。ストックヤードは特に空気質を大事にとの思いが強く、床・壁・天井・建具の杉材で包み込む様なスペシャルな仕様です。杉の調湿効果の高さはすでに知られていますが、ここでも一年を通して温湿度共ほぼ一定のようです。体感としては、真夏でもしっとりとした涼しさが感じられ、香りが際立っています。
杉の産地は、主に奈良(吉野)材、岡山・九州(小国)材、その他、三重(熊野)材などですが、今後も魅力のある杉を探していきたいとのことです。
杉の魅力・杉木箱の空間をたのしんでいただき、木を育てる山や人・製材所のことも伝えていけたらと思います。時を経ていき、自然素材の変化にも愛着が増すことにとても期待しています。
[設計監理:ATEILER KAI 一級建築士事務所 文草舎 梶 純子]