地元吉野の杉と桧で建てた家
奈良県天理市に位置するこの住まいは、吉野で育ち、吉野でじっくりと天然乾燥された材を構造材・内装材・建具等に使用し、できるだけ合板や接着剤を使用せずに建てています。土台・大引き・火打ち土台は桧材、その他の軸組みはすべて杉を使いました。
一等材の柱や梁は節もあるけれど、一本一本その木のクセも見ながら化粧面を決めたので、それぞれの一番いい顔が表に現れています。そんな構造材があるがままにダイナミックに姿を現しているのがこの家の中心にある吹抜けです。吹抜けでは、深い軒から入る柔らかな光と吉野材特有のほんのりとしたさくら色が空間を優しく包んでくれています。
一方、この住まいは機能面での大きな三つの柱として「耐震性」「室内空気環境」「省エネ」があります。それぞれがうまくバランスを取り合って、初めて安心できる「住まい」になります。
壁面の構造耐力は「木ずり(杉)」と筋かいで構成していますが、水平耐力を確保するために一部構造用合板を張りました。この合板は施工前に「シェラックニス」を2度塗りし、合板から発生する物質を封じ込めました。断熱材はペットボトルを再生して作られている「パーフェクトバリア」を床・壁・勾配屋根面に施工しました。断熱性能「次世代省エネ基準」をクリアしています。サッシは高断熱性能サッシにLow-Eペアガラスを採用しました。
床は杉板40mm、壁には一部にしっくい壁、その他は和紙クロスを重ね貼り、勾配天井には杉本実板の白を張りました。キッチン・洗面等の設備家具をはじめ、家具は全て杉の無垢材で製作しました。これも合板を持ち込まない工夫です。木部の塗装は米ぬかの自然塗料を塗りました。
この住宅の外壁と屋根面には「通気層」があります。外気は土台水切部から外壁通気層を通り、屋根面の通気層を経て棟換気口へ抜けます。外気が通ることで、柱等の軸組みに湿気が溜まらないようにして、建物の健康を保ちます。風通しは家の見える部分(部屋の中)にも必要ですが、見えない壁の中や屋根の下にも風が通って初めて、「風通しのいい家」になる気がします。
材料や商品を選択する時、「昔からあたり前にあるもので、この地に似合うもの」を意識しました。和室の腰に貼った吉野の手漉き和紙は機械漉きにはない存在感を。ダイニングにある桧と和紙でできた吉野在住照明作家さんのペンダントは一日の疲れを癒してくれます。
『地産地消』の奈良の家です。