若い家族の家 ~地域型住宅グリーン化補助金を利用して~

 2023.10.2

小さなお子様のおられる若いご夫婦が施主です。ご両親のご自宅の隣に建てた2階建ての住まいです。大工工事をご両親が懇意にされている大工さんに依頼され、私は大工さんから依頼を受け、設計に関わりました。部屋のつながり、広さ、仕上、器具など住まいに対するご希望は明確でした。打ち合わせの過程で、長期優良住宅として地域型住宅グリーン化事業の補助金、奈良県の県産材(構造材及び内装材)補助金を利用されることを提案し、耐震等級3、省エネの断熱性能等級4、奈良県産材を使うことを前提に打ち合わせを重ねました。

 階段と2階ホール

 吹抜と室内小窓

 ヒノキ踏板とスチール手摺

構造は奈良県の木材(柱と土台はヒノキ、梁はスギ)です。内装はDKや納戸の天井に県産材のスギを張りました。当初からの大きなご要望はリビングのスチール階段とその位置、大きな吹抜でした。私はスチール階段の施工の経験がなく、経験ある建築士に相談し、施工者や鉄骨業者のアドバイスを受けデザインやサイズ、おさまりを決めました。最初は取り付け部分など隠してすっきりと見せる図面を描きましたが、将来、万一揺れによるぐらつきが起こった場合、対処が容易なように取り付け部は見せることにしました。階段手摺が吹抜を取り囲む矩形の手摺へと連続するため、寸法の逃げ(余裕)が無かったのですが、ぴったりとおさめてもらえました。踏板は黒滝村のヒノキで厚さ55mmです。30mmでイメージして図面をかきましたが、鉄骨がシャープなことと、大工さんが良い材料を確保してくれたので厚いままどっしりと見せることになりました。上り下りの際の小さな揺れはなく、ヒノキ板の足触りもよく、ゆったりと機能的にも上り下りしやすい階段が出来ました。お子さんがタタタッと上り下りし、手摺の間から覗き込むしぐさはとても可愛いです。DK部分の平天井は厚さ15mm、働きは7寸の黒滝村の源平のスギです。

動線は小さなお子さんを育てながらフルタイムで働く奥様が家事をしやすくなっています。土間クローク、洗面、脱衣ユーティリティ、キッチン、パントリー、寝室につながるWCL、納戸。モノがしまえて、モノがあふれず、モノを使いやすく、時間の短縮になる動線です。

 DKの杉板天井

 洗面台

 

 納戸

洗面台は左官仕上げです。ご夫婦の身長にあわせて通常より高めの洗面台です。下部はシンプルに棚板だけで、かご収納が並べられています。2階はプライベートスペースです。将来2室に間仕切る予定のこども室は、現在はおもちゃがたくさん置かれた楽しいプレイルームです。この部屋でお子さんが友達と遊ぶ声が吹抜を通してキッチンやリビングまで届き、様子がわかるので安心だとおっしゃっています。季節の用品や布団類をしまうための納戸は調湿できるよう天井にスギ板をはり、中段もスギです。

 LDK

建設地の吉野郡は寒い地域ですが、断熱性能等級4をクリアした住まいは、約20帖のLDKに吹抜がある大空間もエアコン1台のみでこの冬を快適に過ごされたそうです。床暖房もありますが使う必要がなかったとのこと。南から陽光が明るく差し込み、寒い時期も暖かいすまいで気持ちよく過ごされています。お子さんが元気に家の中を走る姿を目にして、関わらせてもらえたご縁に感謝しています。

[DATA]

分類: 新築住宅。 設計/施工: 設計室buuhuu-u