築27年木造住宅の再構成 - 家族に寄り添う -

 2023.10.10

 豊かな自然と文化遺産の残る町にこの家は在ります。町には町外から人を招き入れる行事も多く、この家にも人が集まります。住まい手の悩みは来て下さる人をお迎えするには玄関が狭いこと。27年前に購入された家はご両親のご自宅にほど近く、ちょうど良い距離の建売住宅でした。住まい手が決まる前に建てられる住宅なので、各部屋は平均的な広さで構成されています。そこで増築部分(外観左側)を全て玄関とし、これまでの玄関(外観右側)は廊下側に扉を設け、ファミリークロークとしました。

玄関から奥に寝室、LDKを望む

玄関左手土間収納・杉勾配天井

 もうひとつずっと気にされていたのはリビングの採光でした。南面に大きな引違いの掃出し窓はあるのですが、南側隣地の建物がギリギリに建てられています。そこでキッチンの吊戸棚を無くし、窓とし東側から朝の光がよく入るようにしました。同時にLDKの南側の掃出し窓の高さを2200㎜とし、天井も可能な限り高くしました。また、間接照明を意識的に配置し、部屋の明るさを感じやすくしました。

キッチン吊戸棚からFIX窓へ

リビングTV壁に間接照明

 

竣工後外観 北側道路より望む
ポーチ軒天~玄関天井~寝室天井:杉板

Google map Street View
施工前外観 北側道路より

 今回の工事では、まず現状の壁量・バランスを計算し、足りない部分は耐力壁を追加しました。柱頭・柱脚金物も可能な限り現行基準で配置し、構造の強化を行いました。そして、今年度は省エネリフォーム補助金制度が充実しているので、その利用を視野に外部建具回りは断熱性能の高い樹脂サッシを基本に更新しました。仕上げについては、既存屋根・樋・外壁は再塗装し、新規部分と違和感なくつなぎました。内装は1F床と2Fの子どもさんの部屋は無垢のサクラ、ポーチ・玄関・1F寝室の天井は杉板を同じ方向で張り、玄関部分の壁に和紙クロスを貼りました。平面的な変更としては、ほとんど使われていなかった和室を寝室とパントリーに分解し、LDKを少し広くして、暮らしに合った住まいに再構成しました。耐震・耐久・省エネ・居心地がアップした住まいに生まれ変わりました。子育ても終盤に入り、子ども達の独立、定年退職等これからのライフステージを見据え、今回の工事はご家族にとってもぴったりのタイミングだったのではないでしょうか。住まいの性能が上がると、いつ起こるかわからない災害への備えにもなりますし、光熱費が安くなり、暮らしの固定費を抑えることにも繋がります。そして何より嬉いのは、「同じ場所でありながら、全く別の空間での生活に日々感動しております。(施主)」と毎日の暮らしに彩りを添えられたことです。

[DATA]

分類: 戸建リフォーム。 設計/施工: 相河真弓設計工房