マンション集会所を大阪府の木で

 2013.7.15

「枚方にあるマンションの集会所を新しく建てる計画があり、プロポーザルで設計者を決めるらしい」という情報をいただき、初めて現地を訪れたのは2年前の秋でした。

このマンションは建築後約35年経過しており、入居した当時は働き盛りであった住人の多くが高齢期を迎えられていました。現在使っている鉄筋コンクリート造の集会所の2階へ行くにあたり、階段の上り下りにひと苦労するようになったため、既存の集会所の隣に平屋の集会所を建てよう、というのが計画のきっかけです。

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公園の一角に建つ集会所の外観

私が提案した計画のコンセプトの基本は・・・

  • [1] ほっとする、どこか懐かしい雰囲気の空間であること
  • [2] 様々な使い方にフレキシブルに対応できること
  • [3] 建物は公園の広場の延長であること

[1] については、マンション自体は鉄筋コンクリート造であり、住人の方の普段の暮らしはコンクリートに囲まれた空間であることから、せめて集会所にいるときは自然素材を、特に木の素材感を感じていただきたいと考えました。樹種は癒しの効果が高いといわれる「杉」にこだわりました。
材木は地元の木を使おう、というのもコンセプトの一つで、大阪府森林組合に相談し、構造材と屋外のウッドデッキは河内長野の材を使いました。

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大小集会室の間の通路

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小集会室から通路を臨む

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大集会所から通路を介して小集会所を臨む

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ガラス張りの耐力壁

[2] については、人数に応じた適切な広さの大小2つの集会室を計画。さらに仕切りの建具を全面開放することで、2つの部屋の通路を含めると約100人収容できる大広間として使うことができるよう考えました。部分的に耐力壁が必要なのですが、視界が遮られないようガラス張りとし、かつ耐力も確保できる仕様を考えました。

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外観(公園側から)

[3] は、2つの集会室の間の通路を常時開放するということで対処しました。この空間はかつて町中に存在していた「路地」の雰囲気を醸し出し、公園の一部として普段自由に使っていただきたいと考えています。

昨年1年かかって計画~工事と進み、ようやく今年3月初めに完成いたしました。当初どんな集会所になるのか不安に思っておられた住民の方々も、工事が進み木の香りが感じられようになるにつれ、完成を待ち遠しく思っていただけるようになりました。
現在集会所は「集(つどい)」という愛称が付けられ、住人による活動でフル回転中です。マンション住民や地域コミュニティの拠点として、末永く使っていただけることを願います。

[DATA]

分類: 店舗・施設。 設計/施工: 山本尚・設計工房