龍蔵寺僧堂の再生

 2013.7.14

2005年5月、僧堂の再生について相談があり、篠山の現場に調査に伺いました。

本堂が1996年の水害で全壊。その後、テントを建てて行事を続けてこられましたが、龍蔵寺には手入れされた山があり、
そこに育った杉、檜を利用して建築すること、
今まで集めた古材・欄間等を活用したい、
200人ほどの人が集まれる空間を、
くつろげる場所に暖炉を設けたい、
多目的トイレ・車椅子の人が利用できる配慮をすること、
谷間で湿気が多いところなので床の高さは1メートルは必要など、
さまざまな要求がありました。

敷地境界の確認、道路位置指定に時間がかかり、設計は2007年までかかりました。
そして、篠山の藤本林業所に木材の伐採、乾燥、製材を依頼しました。伐採された樹木が製材所に運びこまれている様子は圧巻で、ひろい製材所のほとんどを占めていました。

龍蔵寺の敷地の南側を流れる川に仮説の工事用の橋を掛けいよいよ、工事着工。2008年12月、雪の降る日に上棟。12メートルの棟木が掛かりました。僧堂の中心に立てた30cm角の4本柱。木の空間の迫力に感動し、棟梁の技量に改めて感謝しました。

その後、伐採した檜・杉を生かして使うように林業所と打ち合わせを重ね、設計変更をしながら工事をすすめていきました。

そして2009年9月にとうとう竣工しました。

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龍蔵寺外観

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僧堂内部

僧堂に入ると、仏様の上部の大きなガラス窓から、北の山の緑が目に入ります。東側と西側の開口部は大きく、風と光が射し込み、周囲の風景をながめる場所です。
建具は木製で製作。雨戸、ガラス戸、障子が壁面に引きこめるように工夫しました。
東側と西側にひろいデッキを設け、大勢の人が来たときに利用できるように設置しました。ここで山の緑を眺め、川のせせらぎを聴きながらのお弁当はとても美味しく、龍蔵寺で頂くコーヒーもいつも美味しく感じられます。
それはお寺の近くを流れる武庫川の源流の水を使って、住職さんが心を込めて入れてくださるせいだと思っています。

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欄間と襖絵

古い欄間は僧堂と談話室の入り口に設け、襖絵は玄関ホールの新しい建具に張りました。古材―欅、さくら、楠木―はカウンターの天板、玄関の床に利用。古い木材が混じることで、建物は趣を増やしていくようです。

ポーチと玄関とスロープの床は丹波たたき仕上げ。左官の手が感じられるやわらかな仕上げです。ポーチの柱の土台石は住職さんと藤本さんが龍蔵寺の川で探してきた趣のある石。庭にはかつて本堂で、敷き石として使用されていた御影石を再利用して、庭つくりをしました。時間とともにゆっくりと仕上げていく楽しさを経験しました。

本来、建築を創るということは、建築家と多くの専門職が力を合わせて、その地に相応しい自然素材-木材、石、土、紙―を使いながら、風景を新たに創ることだと思います。今後、どのように周辺を整備しながら龍蔵寺が美しく成長していくのか、見守り、協力していきたいと思っています。

[設計監理:アルプラン 中川倶子]

[DATA]

分類: 店舗・施設。 設計/施工: (株)アルプラン