無垢の杉に包まれた温かい空間 ~もくもく保育園~
今年4月、堺市西区で小さな保育園が開園しました。 0・1・2歳児が対象で19人定員の小規模保育施設です。
当初ご相談をいただいてから、紆余曲折があり3年の歳月を要しましたが、運送業をされているオーナーの強い思いで、ゼロから立ち上げることができました。
・この地で事業をはじめて30年が経過し、これからは地域に貢献できることがしたい。
・運送業の人手不足や高齢化も深刻な中で、子育て世代や女性にも働いてもらいやすい環境を整えたい。
利便性が良いとは言えず、建物を建築すること自体が難しい市街化調整区域で、乗り越えないといけないことが多くありましたが、1年前から動き出しました。
建物や保育について、オーナーでもある園長先生のこだわりや要望を尊重しながら、設計を進めました。
今回は運送業事業駐車場の一画を保育園用地として、ゆとりある敷地を確保されたこともあり、保育室とランチルームを別棟にして、その間をウッドデッキでつなぎ生活空間の場として、内外を自由に動き回れるようにしました。南側の公園に面して園庭を広げることで、地域の人たちと繋がり見守ってもらえる環境となっています。

保育室から玄関ホールを見る

1,2歳児室(奥:1歳児室
室内は子どもたちがのびのびと過ごせるように無垢の木に包まれた空間にしたいという提案をしました。打合せを重ねる過程で床暖房を施さないことになり、木の温かさと柔らかさを体感してもらえるように床板は杉の厚さ30mmにしました。長年の間に抜け節や生き節が割れたりすることがあり、子どもが指をひっかけたりしないように床には節のほとんどない上小節としました。また腰壁は節のある杉一等材とし、使い分をしています。

ランチルーム(奥:調理室)

ウッドデッキからのランチルーム

外観:正面玄関側(保育室棟)

外観:園庭からの保育室・ランチルーム棟
外部ウッドデッキの杉材は、心材部分(赤身)で外部用自然塗料を3回塗としました。
保育室はワンフロアとし、その中で0歳児のスペースは建具で間仕切り、1・2歳児はロッカーで間仕切るようにし、家具を動かすことで、園児の受け入れに対応できるようにしています。
玄関・幼児用トイレ・ランチルームには絵本の壁紙が壁の一部に貼られています。工事中に園長先生から要望があり、壁紙を支給という形で職人さんに貼ってもらいました。窓や機器で動物の顔が隠れないようにクロスメーカーと調整しながらレイアウトをしたものです。木の温かさと調和し、子どもたちが新たな物語を描いてくれそうな空間になったと思います。

玄関

幼児用トイレ

ランチルーム

ウッドデッキにボルタリング

玄関土間にビー玉
オーナーのこだわりが詰まった居心地のいい保育園で、いろんなことを体験させてあげたいという園の方針のもと、先生方の手厚い保育で日々を過ごす子どもたちの成長が楽しみです。
実現に向けて一緒に形にできたことに感謝すると共に、これからも地域貢献を含めいろいろな取り組みについて、見守っていきたいと思っています。
[設計監理:ZERO&NiS 西野智子]



