築100年の住まいを令和の時代につなげて
たくさんのインバウンドで賑わう京都からの報告です。太平洋戦争が終わって今年で80年、空襲の被害を受けた都市の状況もこの夏はたくさん報道されました。京都の市街地は幸いにして戦火を免れましたが、80年の時間によって、京町家と言われるたくさんの住まいも「劣化」という波にさらされるようになっています。そんな中で京都市は文化的な遺産としての京町家を守りつつ、都市の防災力も高めようといろいろな施策を打っています。今回使った「まちの匠」という耐震強化の助成金もその一つです。
今回の施工例は若いご夫婦が生まれてくる赤ちゃんと住むために改修を行った築100年の京町家です。この町家は、元々は奥さんのお母さん、赤ちゃんから言うとおばあちゃんが育った家です。
京町家は一般的な造りとして隣接するお隣さんと壁を共有していたり、構造材自体が細いというようなことがあります。今回は京町家の特性を残すために、既存の土壁はなるべく撤去しない方針です。その他については再利用が可能な構造部以外は解体し、スケルトン状態にしました。
その他、小屋裏で筋交い補強をし、2階床構面を新設し、耐震性能を向上させています。さらに、内壁を取ってみるといろいろなところで傷みもありました。それら一つ一つについて経験を積んだ職人さんたちとともに補強方法を考え、腐っている材は替えたり、新たに構造材を足したりと言うようなことを行っています。
伝統的な京町家は座敷の連続で構成されていますが、今の生活のあり方、子育ての有り様などを考えると、やはり細かい座敷の連続ではなく、限りある床面積でも家族が集まれる場はできるだけ広く、つながりが感じられるように、ゆるい区切りはあるけれども視覚は連続できるヒノキの耐力格子壁をダイニングと居間の間に設けました。また建物が密集しているこの場所では天窓からの光は室内空間を豊かにします。
100年の営みを見つめてきたこの住まいが令和の時代につながり、お母さんから娘さんへ、そして生まれてきた子どもさんへと営みの場がつながったことは、設計者として大きな喜びです。
今回のもう一つの喜びは、30年前に私たちの事務所で新築として設計をさせていただいた住まいで、幼い時期から思春期を過ごし、大人になった娘さん夫妻からの依頼だったということです。「もく(木)の会」が大切にしてきた住まいへの思いもつなげられたように感じました。これからも、ご家族のみなさんが健やかで穏やかな時間を過ごしていかれることを心より願っています。
[ 設計監理:KS(ケイズ)設計室 山本恭子 ]



