住まいの“かがくぶっしつ” - 殺虫剤・防虫剤(その1)
建材から出る化学物質だけでなく、生活のために持ち込んだ様々な製品からの化学物質もシックハウスの原因と考えられています。中でも、殺虫剤・防虫剤に用いられる成分は、いわゆる“農薬”の成分の仲間です。特に防虫剤は最近ではにおいがつかないというものが多くなり、きちんと意識しておかないと使い過ぎてしまう危険性があります。防虫剤はクローゼットなど空気のたまりやすい場所で使われ、衣服にもその成分が残ります。さらに、防虫成分は空気よりも重いものが多く部屋の下の方に滞留する可能性があります。人が吸い込む空気の約2/3は体の周りにできる上昇気流に乗って下の方から運ばれてくるので、その使用には十分な注意が必要です。
殺虫剤・防虫剤の有効成分は基本的に虫の神経系統の働きを麻痺させることで、効果を発揮します。殺虫剤はその有効成分を効果的に害虫に届けるように、防虫剤は害虫の嫌がる臭いや殺虫成分が徐々に空気中に出るように加工された薬剤です。
においが特徴的な防虫剤には室内空気濃度の指針値が決められている「パラジクロロベンゼン」(パラゾール)があります。この化学物質は発ガン性が認められており、2001年から施行されたPRTR法*でも、その排出量を公表することが義務付けられている物質です。平成12年度のパイロット調査では一般家庭からの推計による排出量が最も多い物質でした。においがつかない防虫剤のほとんどは「ピレスロイド系」と言われる化学物質です。これは、除虫菊の成分「ピレトリン」に似せて作られた化合物で、除虫菊の有効成分を取り出しその効果のメカニズムを調べて合成した物質群です。
このように化学物質と言われるものは、天然物の中から人の生活に役立つものを取り出し、さらにそれらを人工的に作ることで発展してきました。しかし、この発展の中では「効果」が優先的に考えられ、環境や生物への影響の評価は後回しにされてきたというのが事実です。「効果」をあげるために濃度が高められてもきました。「天然物は人にやさしく、人工物は危険である」というイメージがありますが、必ずしもそうではありません。天然物由来の物質であっても、その量(濃度)が増えれば、影響は大きいものになります。