住まいの“かがくぶっしつ” - 殺虫剤・防虫剤(その3)
今回は、先日ある方から受けたこんな質問について考えてみます。
「防虫剤を使うと体調が悪くなるので1年程避けていたらコートが虫に食われました。何が体に悪いのか。そして、コートも私も安心して生活出来る方法を教えて下さい。」
防虫剤を扱った日から調子が悪いということは、含まれている化学物質に対するアレルギーがあると思われます。しかし、防虫剤は主成分の「防虫成分」や添加剤など様々な化学物質が空気中に揮発します。これらのうちの何が原因なのかを確認するのは難しいことです。「化学物質過敏症」という病気を御存じでしょうか。特定の化学物質に慢性的にあるいは一度に大量に触れることによって、その後同種類、同系統の化学物質に”過敏”に反応するようになってしまう病気で、シックハウス症候群もひどくなるとこの病気である可能性が高いと言われています。この病気は誰でもかかる可能性があると言われ、私達も他人事ではありません。この方も自宅のリフォーム後に体調を崩されたと聞いており、その可能性があるかもしれません。残念ながら、病気のメカニズムなどはまだわかっていないことが多く、この病気であるのか、「何」が原因なのかについて診断できる医療機関も少ないのが現状です。少しでも反応するようになってしまった場合は、とりあえずその化学物質を避けることしか方法はありません。
それならコートを守るにはどうしたらいいのでしょう。防虫剤の役割は、虫を衣類に近付けないようにすることです。その役割を別の方法で考えてみましょう。虫を避けるにはコートを密閉容器(パチンと閉まるプラスチックや金属のコンテナー容器など)に入れて保管するという方法が考えられます。しまう時に虫を一緒に入れないよう、きれいにしておけば食われる可能性は低くなるはずです。(ただし、クリーニング直後は衣服に溶剤成分が残っているので十分陰干しして臭いが取れてからしまいましょう。)容器の密閉性が低いとか、安心のために、最小限の防虫剤は使いたいというなら、できるだけ直接吸い込まないように注意しましょう。密閉容器に入れておけば室内に防虫成分が広がってくる可能性を低くできます。昔の「やなぎごおり」はふたを閉めることで、防虫剤成分が室内に大量にもれ出すことを防いでくれていた面もありました。防虫剤の出し入れは屋外で行う、出してきたコートを使う前には陰干しするといったことも必要ですね。
一番大切なのは「何のために」「どのように」使うのかを考えるということです。