住まいの“かがくぶっしつ” - 珪藻土 

前回までは、“化学薬品”というイメージの強い殺虫剤・防虫剤を例にして、比較的「有害性」の高いと考えられる化学物質についてお話してきました。

今回からは少し趣を変えて、建材として使われているものの中から左官材のお話をしたいと思います。左官材とは、壁や天井に塗ることで使われる土壁やしっくいなどのこと。その中でも最近よく耳にするのが“珪藻土(けいそうど)”です。珪藻土は“土”と書かれますが、実は珪藻という植物プランクトンの化石です。珪藻には固い殻があり、この部分が堆積物として土中に残ります。主成分は「ケイ酸(SiO2)」。ガラスなどと同じ種類の化合物です。殻の部分には非常に小さな穴がたくさんあいているので、吸湿性や吸着性に優れた材料とされています。珪藻土そのものはもろく、非常に高い温度(約800℃)で焼き固めて七輪などに使われていました。左官材に使われるようになったのは最近のことで、合成樹脂を使ってしっかりと固めることができるようになってからです。土壁やしっくいはもともとの性質を生かせばある程度固めることができるので「糊」は補助の役割ですが、珪藻土の場合は「樹脂」を用いないと左官材としては使えません。ですから、“自然素材”と言われる珪藻土壁材も珪藻土以外に何が入っているのか注意しておきましょう。

さらに、珪藻土の主成分「ケイ酸(SiO2)」の「有害性」も、剥がれ落ちた粉(粉塵)を吸込んだ時の健康への影響が他の自然素材であるしっくいの主成分「炭酸カルシウム(CaCO3)」などと比べるとやや高いものになります。初めにお話したように、そのリスクは物質そのものが持っている性質としての「有害性」とどの程度その物質に触れるかという「曝露量」のかけ算で決まるものなので、安全であるかないかを判断するのは難しいことですが、マイナス面の情報として知っておいていただきたいと思います。

モノが持つ性質はひとつではありません。珪藻土壁材は吸湿性・吸着性に優れるという機能を活かすように作られましたが、それ以外の性質も知っておきたいものです。また、建材は長い年月を経て使われるもので、気候風土など使用状況にあったものであるかどうかはこれからわかってくることだと思います。はじめからオールマイティなものは存在しませんから、「どのような状況で使うのか」、そして使うモノが「どんな性質なのか」ということを考えて選んでいくことが一番ですね。