住まいの“かがくぶっしつ” - 石こうボード 

左官材とは異なりますが、「石こう」も化学物質の種類で分けるとしっくいや珪藻土と同じ無機化合物です。 “無機”“有機”という区別は、現在では化学的には厳密なものでなくなりましたが、命あるものが創り出す“有機”化合物に対して“無機”化合物という言い方がされます。また、石こう「硫酸カルシウム二水和物(CaSO4・2H2O)」は、しっくいやセメントに用いられる消石灰「水酸化カルシウム(Ca(OH)2)」と同じカルシウムの化合物ですが、石灰とは異なり中性で皮膚への刺激性などが少なく、古くからギプスや漢方薬などにも使用されています。

石こうボードが耐熱・耐火性に優れるのは石こうが分子の中に結晶水として水(H2O)を持っているためです。120~150℃に加熱すると、結晶水全体の3/4を失って焼石こう(CaSO4・1/2H2O)になり、水を加えるともとに戻って固まります。この性質を利用し、原料石こうを焼石こうに加工した後、水・混和剤・添加剤を加えて上下2枚の厚紙の間に流し込んで成形したものが石こうボードです。原料石こうは天然に産出する天然石こうと、重化学工業の公害防止に伴って回収されている排煙脱硫石こう(化学石こう)、さらには廃石こうボードから回収された廃石こうなどがあり、今では原料の半分以上が化学石こうです。また、石こうボード用原紙は100%再生紙が使用されています。

1997年、栃木県宇都宮市の産業廃棄物安定型処分場周辺で浸出した水から有害物質であるヒ素が検出され、原因はヒ素等が混入した排煙脱硫石こうを原料に使用した石こうボードであることがわかりました。当時石こうボードはそのまま埋め立てられる「安定型処分場」に処理されていました。更に、有機物である紙がついたままのボードを安定型処分場に処理した場合に有毒ガスの硫化水素が発生する可能性も指摘されました。問題のボードは回収措置がとられ、以降、原料石こうの管理徹底、廃棄についても紙と石こうとを分別して処分するよう指導されています。分別された石こうは「安定型処分場」、紙や分別されていないボードは遮水シートなどの汚染防止措置がとられた「管理型処分場」に処理され、廃石こうのリサイクル率も上げるよう努力されています。揮発性物質や粉じんなどのように直接人体に入ってこないものであっても、地下水の汚染などにより最終的に人への影響が懸念されることがあります。建築廃材についてはリサイクル法も制定され、今後は使用後のことも考えた建材選びが必要になってきます。