住まいの“かがくぶっしつ” - 断熱材(その2) 

断熱材【1】ではグラスウールなど無機の繊維質材料についてお話しましたが、今回は有機材料についてお話したいと思います。有機・無機の区別は何度もお話していますが、命あるものが創り出す”有機”化合物に対して”無機”化合物という言い方がされます。

この有機材料の中でも、自然素材ということで最近は羊毛や木材から加工されたセルロースチップ等が注目され、様々な商品が出てきています。コストの問題もありますが廃棄時のことを考えると、こういった自然素材は有利です。しかし、気をつけなければならないこともあります。

まず、こういった有機質の材料そのものの性質を考えてみましょう。断熱材として困る性質を考えると、無機材料にくらべ燃えやすいということ、また、シロアリなどの虫害、食害にあう可能性が高いということが挙げられます。このデメリットの性質をクリアするために、商品によっては防虫加工や難燃加工が施されている場合があります。防虫加工や難燃加工に用いられる代表的な化合物が「有機リン系化合物」です。「有機リン系化合物」とは、炭素や水素からなる有機基にリンが結合している化合物のことで、有機基の数や種類などによって、実に多くの種類があります。昨年の建築基準法改正で使用禁止となったクロルピリホスをはじめ、ダイアジノンやフェニトロチオンなどが含まれます。2004年1月19日付朝日新聞にも掲載されましたが、最近この「有機リン系化合物」の慢性的な毒性が明らかになってきました。微量であっても繰り返し吸い込んでいると、頭痛やめまい、うつ症状、睡眠リズム障害など様々な精神・神経障害が現れてくるというものです。これは「有機リン系化合物」が体内の様々な酵素の働きを阻害することでおこると考えられています。現在は「危険であると判断されたものは使わない」という対応がされています。つまり、あきらかな危険性がわからない限り、新しいものは使われているというのが現状です。

素材そのものの性質を考え、使用する状況において不利になる性質を変えるために何か別の加工剤が加えられていないかにも十分気をつけるようにしましょう。