住まいの“かがくぶっしつ” - 断熱材(その3) 

断熱材【1】【2】では繊維質材料の断熱材についてお話しました。今回は気泡タイプの断熱材、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタンについてお話しましょう。これらは、樹脂を成形するときに発泡させて気泡をつくり、その空気層で断熱効果を持たせるようにしたものです。発泡ポリウレタンについては現場で樹脂を硬化させる現場発泡タイプのものも使われています。こういった合成高分子材料は断熱材に限らず、多くの建材に使用されています。高分子材料が登場して、建築材料の種類が飛躍的に増えたともいえます。塗料や接着剤の主成分も合成高分子化合物です。

では、発泡ポリスチレンや発泡ポリウレタンとはどんなものでしょう。合成高分子化合物の名前につく「ポリ」という言葉は、「たくさん、多」を表す接頭語です。ポリスチレンは「スチレン」という分子がたくさんつながって高分子になったもので、つながった長さ(分子量)はただ1種類のものではありません。また、「ウレタン」は実は一つの物質を表す言葉ではなく、特定の結合の形を表す言葉なので、一言で「ウレタン」といっても非常に多くの種類があります。同じようなものには「ポリエステル」があります。高分子化合物はこのように、「ホルムアルデヒド」などの低分子化合物とは異なり、ただ1種類の物質からなるものではありません。更に、材料となると主成分である高分子化合物以外に様々な添加剤が使用されます。

基本的にウレタンは2種類の化合物を反応させて作りますが、あらかじめ反応しやすいように合成した「ウレタンプレポリマー」が使われることもあります。この原料となる化合物の中には反応性が高く、人によっては影響のある物質もあります。添加剤の中に注意すべき化合物が含まれている可能性もあります。現場発泡タイプの場合は、MSDS(製品安全データシート)を取り寄せ、使用されている化合物を確認するようにした方が良いでしょう。以前は、発泡にフロンガスが使用されている場合が多くありました。廃棄時に気泡内に閉じ込められていたフロンガスが空気中に放散されることが問題であるとの指摘もあります。

様々な性質の材料を工業的に作ることが可能な高分子材料は非常に便利なものですが、使用される化合物が多い分、わかっていないこともあります。全てにおいて万能の材料はありませんから、その性質をよく知るようにしましょう。