住まいの“かがくぶっしつ” - 「データを読む」ということ 

建築材料の性質は、一般的に数値化されたデータで表されます。製品のカタログにも様々なデータが示されています。今回は昨年改正されたホルムアルデヒド放散基準を例に、「データを読む」ということについて考えてみることにしましょう。

ホルムアルデヒド放散基準

昨年、JISやJASでの等級表示が統一されましたが、この基準になる値の単位が変わったことにお気づきでしょうか。改正建築基準法では「放散速度」による等級設定がされています。そして、従来のデシケータ法に加え、小型チャンバー法がJIS A1901として新しく制定されました。

放散速度は材料固有の値ではなく、チャンバー内の濃度などが変われば変化します。つまり、ホルムアルデヒドが材料の中を移動していく速度や、空気中のホルムアルデヒドが再び材料に吸着されるといった条件も検討する必要があります。前頁の式では検討されていませんが、実際はこれらの要因も放散速度に影響することがわかっており、そういった条件にあった理論式も提出されています。それらを踏まえて建築基準法で決められた条件は、かなり厳しい条件となっています。

<改正建築基準法の環境条件>  測定方法の指定なし。JIS A1901の測定条件とは異なります。
温度28℃、湿度50%RH、換気量/面積(Q/S)0.05(m/h)(気中濃度100μg/m3時)

データと“ものさし”

重さや硬さ、強さなど材料の性質を表す数値には様々なものがあります。これらはそれぞれ、秤や硬度計、強度試験装置などを使った測定方法、つまり決められた”ものさし”で測り、その測定値が示されたものです。この数字の大小によって、重いものと軽いもの、硬いものと柔らかいもの、壊れにくいものと壊れやすいもの、といった性質の比較がしやすくなります。

JISやJASは製品の品質を管理するための基準となるデータを取る方法を規定したものです。管理すべき新しい項目が考えられると、そのための測定方法も検討されることになります。このような材料の管理項目は実際の使用を前提にされているものですが、毎回実際に使用して試験することは難しいため、モデル化した実験方法が考えられます。つまり、実際の状況を解析して結果に影響があると考えられる要因を調べ、その理論に基づいた実験方法を作ることになります。そして、モデル化された実験方法が、実際の状況を再現しているかどうかを確認し、新しい試験方法として決められていきます。