シックハウス - 改正建築基準法について 

改正建築基準法

2003年7月改正建築基準法が施行されました。

1.なぜ法律が作られたのでしょう?

新築・リフォームなどによって居住者が健康被害を受ける「シックハウス症候群」。
現在、その原因物質と考えられるホルムアルデヒドなど13の化学物質について指針値が設けられています。さらに最近行われた実態調査から、実際には指針値を超える住宅が多いこともわかってきました。そこで住む人の健康を守るために最低限の基準として今回の規制が設けられました

2.規制の対象は?

住む人の健康を守るための法律ですから、人が継続的に使う「居室」(※1)を有するすべての建築物が対象になります。そして、今回規制される物質は2つ、「クロルピリホス」と「ホルムアルデヒド」です。

(※1)「居室」とは?
住宅の居間や寝室、事務系の事務室や会議室、工場の作業場や商店の売り場、喫茶店やホテルのロビー、宴会場など、人が継続的に過ごす部屋と定義されています。廊下や玄関、トイレ、浴室などは原則規制対象外となりますが、換気経路として空気が通る場合は居室とみなす等、条件によって居室扱いになる場合があります。

 3.どのような規制ですか?

「クロルピリホス」(※2)については全面使用禁止になります。
「ホルムアルデヒド」(※3)については、厚生労働省の指針値以下にするため、次の3つの対策全てを取ることになります。

(※2)「クロルピリホス」
シロアリ駆除剤に使われる有機リン系の化学物質。

(※3)「ホルムアルデヒド」
合板の接着剤をはじめ、多くの建材に使われている化学物質。今回設定された指針値は温度28℃、湿度50%で100μg/㎥(0.008ppm)以下とされました。この条件は夏場のエアコンをかけた状態を想定しています。

◎「ホルムアルデヒド」対策

▽ 内装仕上げ材の使用制限
17種類の建材についてホルムアルデヒド発散量に応じて内装仕上げでの使用量制限が行われます。
ホルムアルデヒド発散量に関する基準はこれまでJASおよびJISで決められていました。今回、これらの表示が統一されました。そして、内装仕上げには表示のあるものと大臣認定を受けたものしか使えなくなります。
<来表示と新表示>

ホルムアルデヒド゙発散量(μg/mh) 従来表示 新表示 内装仕上の使用制限
~5 F☆☆☆☆ 制限無し
5~20 JAS : Fc0、JIS : E0 F☆☆☆ 制限あり
20~120 JAS : Fc1、JIS : E1 F☆☆ 制限あり
120~ JAS : Fc2、JIS : E2 使用禁止

この規制はあくまでも「ホルムアルデヒド」についてのものです。ホルムアルデヒド発散量が想定値以下なら F☆☆☆☆ 表示となります。
ビニルクロスなどもホルムアルデヒドが5μg/mh以下であればF☆☆☆☆建材ですし、同じく塩化ビニル製クッションフロア材は下記規制対象外の建材となります。塗料・接着剤についても同様で、今回規制対象とならなかったトルエン・キシレンなどを含んでいてもこの表示には関係がありません。
F☆☆☆☆建材=健康使用ではないことが注意が必要です。無垢の木材や石、金属などは規制対象外になります。

<ホルムアルデヒド規制対象建材>
合板、木質系フローリング、構造用パネル、集成材、単板積層材、MDF、パーティクルボード、その他の木質建材、ユリア樹脂板、壁紙、接着剤(壁紙接着用など、現場施工用および工場二次加工用)、保湿材、緩衝材、断熱材、塗料、仕上げ塗材、接着剤(溶剤系など、現場施工用)

▽ 換気設備の設置義務付け
居室の空気が常時、1時間に全体の半分は入れ替わるよう(換気能力0.5回/時)換気設備をつけることが義務付けられました。これは持ち込む家具からの発散などがあり、内装仕上げ材の規制だけでは指針値を下回ることが難しいと考えられることから決められました。

換気設備をつければ大丈夫というのではなく、きちんと空気が入れ代るよう意識していくことが大切です。機械換気は義務付けになりましたが、自然の風の流れを考えた計画が望まれます。
自分たちのライフスタイルに合わせた換気計画を考えていきましょう。

―家具などにも目を向けましょうー

作りつけの家具はその面積によって規制対象となりますが、持ち込む家具は対象外です。家具に使用されている合板などについても注意していくようにしてください。
また、生活用品についての対策は遅れています。防虫剤・殺虫剤・芳香剤など、暮らしに持ち込む製品についても注意が必要です。

▽ 天井裏等の制限
天井裏や小屋裏、収納スペースについても一定の規制が設けられました。これらは実態調査の中でホルムアルデヒドの発散量が非常に多かった場所です。身につける衣類や布団などの収納場所、室内に空気が流れ込んでくる可能性がある場所にも注意が必要であるという対策です。

4.シックハウスにならないために

今回の規制はシックハウスをつくらないために決められた最低限の基準です。この法律が決められた背景をきちんと理解し、本当に大切なことは何かを忘れないようにしてください。表示や設備だけに頼るのではなく、自分の目で確かめることも大切です。
まずは住まいの素材に関する情報を正しく得て、しっかりした換気計画をたてることが基本です。そして、本当に健康な住まいづくりについてひとりひとりが見直していくことが大切でしょう。
もく(木)の会はシックハウスを作らないという目的から更にもう1歩踏み込んで、心や体に本当に優しい住まいとは何かをこれからも考え、国産材などの自然素材を積極的に使っていきたいと思っています。