自然素材あれこれ - 柿渋 

 

「柿渋というと思い浮かぶのは、食いしん坊なら柿の葉寿司、年配の方なら時代劇で浪人が貼っていたジャノメ傘でしょうか。戦後、性能の良い化学塗料の登場ですっかり影の薄くなっていた柿渋ですが、昔から、板塀や布・紙などの染料として、また、高血圧・二日酔い防止・やけど・しもやけなどの民間薬として長く親しまれてきました。最近、シックハウスの問題から、有害物質を含まない天然塗料として、また、脚光を浴びてきています。

柿渋の原料は小さな青柿、それも渋ければ渋いほどよいのです。品種としては、京都山城地方の天王柿、奈良の法蓮坊柿、広島の祇園坊柿などが有名です。主成分は高分子のタンニン(柿ポリフェノール)。ポリフェノールは、最近では赤ワインやチョコレートなどですっかり有名になりましたが、光合成によってできる植物の色素や苦味の成分で、抗酸化物質の一つです。代表的なものにはカテキン(緑茶)タンニン(柿、赤ワイン)イソフラボン(大豆)などがあります。抗酸化物質なので防腐作用があり、柿の葉寿司などに利用されたのです。最近ではお弁当箱に入れると抗菌作用があるといった商品にも利用されています。また、タンニンは植物が害虫などの外敵から葉や実を守るもの。そのため、防虫効果があります。柿渋を塗ると堅い皮膜ができ防水性もあります。この性質を利用して、ジャノメ傘に塗ったり、板塀に塗ったりしていたのです。今でも、三重県の鈴鹿地方では染色の型紙に柿渋紙が利用されているそうです。

しかし、柿渋にも欠点があります。その一つは強烈なにおい。塗ってから2~3週間はにおいます。もう一つは雨などの当たる場所に塗ると時間とともに剥がれてしまいます。それで、昔は板塀は年に1回塗りなおしていました。もく(木)の会では、家具に柿渋和紙を貼ったり、防虫・防腐のため建物の土台にベンガラを混ぜたものを塗ったりすることもあります。床下は、直接雨や日光が当たらないので、効果は外部より長く続くと思います。

*自然素材の施工例
「柿渋和紙をつかったキッチン・家具」
「キッチンの床に柿渋を塗った杉を張る」