温故知新・職人の技 - 欄間(その1) 

和風デザイン図鑑(建築知識別冊)によると「欄間は、天井と鴨居との間の小壁に設ける開口で、採光・換気などの目的のほか、部屋と部屋、部屋と縁側、縁側と外部との間の連続性を持たせるため、透しの手法を取り入れた装置である」とあります。

夏場は蒸し暑くなる日本の木造建築に風の道をつくり、視覚的にも涼しげで、部屋に風格を添える欄間の意匠は惹かれるものがあります。奈良時代から寺社建築に使われた連子(れんじ)と呼ばれる細かい格子や筬(おさ)欄間、採光中心の障子欄間、組子欄間などは建具職人の腕の見せどころでした。やがて平安・桃山時代になると花鳥風月を華麗に彫刻した欄間や透かし彫りの板欄間などで独自の欄間の世界が作られていったようです。

襖を閉めて天井からの反射光を眺める奥ゆかしさは天井にシーリング(直付け)ライトをつける時代になり忘れられた光景かもしれません。風流より空調の効きのほうが優先される時代です。それよりも和室自体が無くなってきました。個人主義が尊重され、連続性の無い壁に囲まれた洋間が近代化の象徴とされてきたのですから。近代化の波に押され、私たちの祖先が日本の風土に合わせた創意工夫や意匠が絶滅危惧種になっています。西洋の石の文化に対する日本の木の文化を鑑賞してみませんか?