温故知新・職人の技 - 欄間(その2) 

大阪欄間の老舗である「榎芳(えのよし)商店」を訪問しました。大阪欄間の始まりは十七世紀初期で、大阪府内の聖神社や四天王寺等にその伝統技法のもととなる技術がみられます。その後、江戸時代中期には商家を中心とした一般の住宅の茶の間、客間等の鴨居(かもい)の上に、光を取り入れたり風通しを良くするという実用性と、品格を表すための室内装飾として取り付けられました。

元禄期以来繁栄してきた大阪欄間の伝統を今に伝えている榎芳商店の本店は大阪市西区にあり、彫刻欄間、透かし欄間等の他、木製建具や神社仏閣彫刻等も手掛けられています。店内に入ると細かく彫刻が施された数多くの欄間に囲まれて職人の湯池さんが彫刻欄間を手がけておられました。杉に梅の木が細かく彫刻されており一間巾、二枚で一セットの欄間の裏表を彫刻するのに、図柄の密度にもよりますが、彫り始めてから完成までに三ヶ月位を要するとのことです。

【作業中の湯池さん】               【道具の一部】

様々な図柄の「彫刻欄間」「透かし欄間」「筬(おさ)欄間」のほか、聖鳳(せいふう)彫りに代表される彫刻額や衝立も見せていただきました。店主の川崎さんによると、製作以来何十年も人目にさらしたことがないそうで、このような見事な芸術品が埋もれているのはもったいない思いで一杯になりました。欄間や書院が住まいのなかで当たり前に存在した頃に活躍した小型のサンプルも、精巧で見事な造りのまま静かに出番を待っています。

【透かし欄間】             【衝立】             【小型サンプル】

日本気候と暮らしの中で生まれた欄間ですが、時代とともに今忘れ去られようとしています。エコが叫ばれるこの時代にこそ、見直すべき物の一つではないでしょうか。