温故知新・職人の技―桶 

製桶所

製桶所

堺市で今も大きな桶を作っている、藤井製桶所(㈱ウッドワーク)を訪ねました。

江戸時代の最盛期にはたくさんの桶屋が堺にあったようです。堺には奈良や和歌山、大阪に通じる街道が集まり、刃物の技術も盛んで木や桶・樽を運搬する大きな港もあり繁栄しました。代表の上芝さんは3代目。今では大きな桶を作れる技術のある桶屋さんは全国でも少なくなっているそうです。

杉の「白線帯」

杉の「白線帯」

木の方を動かす「正直カンナ」

木の方を動かす「正直カンナ」

樽と桶の違いは板目取りと柾目取りの違いだけで無く、用途と慣習による呼称もあるということです。樽は貯蔵や運搬に使われ、鏡板で蓋をされたものでかつて大量に作られました。桶は酒造や醤油など製造に関わる大きな容器を中心に多様な大きさのものを作り桶屋では多種な道具が必要であるということでした。
また酒造元と桶屋さんの常識の杉の「白線帯」のお話は興味深いものでした。上芝さんが150年位の杉の輪切りで、赤身と白太の境目の希少な部分を示し、杉を伐採した時に1時間くらいは白く浮き上がっていて、桶にはこの部分を使うのだそうです。そして桶や樽の木材産業が金属やプラスティックにとって変わる前には、木をよく知る「木取り商」がいて、木の使い道に合わせて、木の適材手配をする職業があった、今は全て自分で材の手配をするということでした。

桧の間伐材で作られる「天水桶」

桧の間伐材で作られる「天水桶」

杉桶の最上の材は吉野の川上村の杉で、漏れが無く香りも最上ということで、桶の杉材の厚さは75ミリ底板の厚さは100ミリが使われています。
酒や醤油の大桶は一度製造したら100年から150年は使われるのでその修復の仕事もしながら、桶作りの技術を現在にどう生かしていくかを常に考えておられます。店舗やバンガロー用途、時代劇の撮影用やビルの受水槽など。また2年程前から雨水利用の「天水桶」などの新しい取組みをされています。天水桶は都心の集合住宅にも採用され、都市の集中豪雨などによる下水道の対策にも必要になってきたいうことでした。

藤井製桶所は都心から数十分。こんな身近な場所で伝統が守られ現在に生かされていることを知り、皆感銘を受けて帰りました。
そして木理直通で加工性のいい日本特有の杉があったからこそ桶・樽がたくさん作られ、
木を大事にリサイクルリユースするエコロジーな生活をしてきた先人の生活を改めて感じました。