奈良県フォレスターアカデミーを見学して

活動報告 2022.2.28

昨年4月、奈良県吉野町に「奈良県フォレスターアカデミー」が開校しました。

新たな森林環境管理の担い手を育成する学校です。

その取組みの現場を見学させていただきました。

県立吉野高校の3階にあるアカデミーの教室

 

まず初めに、創立から関わられた校長の藤平拓志氏に学校についてご説明いただきました。

このような学校を開校するきっかけとなったのは、平成23年夏の記録的な豪雨による県内約1800カ所に及ぶ土砂崩壊発生です。

年々増加する施業放置林が森林環境を悪化し、防災機能の低下を招いていました。

そこで、持続可能な新たな森林環境管理が必要なのでは、と模索が始まり、スイスのフォレスター制度を参考に、森の番人、「フォレスター」を育成する学校の設立に至ったそうです。

学生の中には数名の県職員採用者が含まれており、彼らは2年間の学習を経て、奈良県フォレスターとして市町村の森林管理・林業行政を担います。

「フォレスター」は幅広い分野の知識と技術だけでなく、森林や地域住民の声に耳を傾ける力も必要とされます。

 

高取町の山で将来木施業の実習を受ける学生さんたち

 

午後は雲一つない晴天の下、高取町の山での実習授業を見学しました。

授業内容は恒続林化へ向けた将来木施業の選木です。(※恒続林:皆伐をせずに抜き伐りを繰り返すことで様々な樹種・年齢の木からなる森林を形づくり、常時森林状態を維持しながら木材生産を行っていく森林)

選木はまず「将来木」を探します。将来木とは「その林分の林業経営の将来を託したい木」のこと。

実習地は約50年前に桧と杉の植林が行われた森です。

直径は何センチ?樹冠径は何メートル?と、杉・桧それぞれの目標寸法を決め、選定に入ります。
(将来木にはオーラがあるそうです。)

将来木の選定における優先順位は ①安定性 ②活力 ③品質。品質よりも安定性が優先されるところが興味深いところです。

その森の過去と未来を想像する力が試されます。

将来木の選定が終わるとライバル木を決めます。

これから先10年後の施業(間伐又は主伐)を想像し、それまでに将来木の成長を阻害するかどうか、で判断されます。

学生さんたちはとても熱心で積極的です。

講師の佐藤浩行氏の指導もわかりやすく、丁寧です。

とても良い環境で未来の「フォレスター」を養成されている、と感じました。

 

授業を行う講師の佐藤氏

将来木施業の選木中

 

奈良県吉野地域は日本の造林始まりの地であり、先代から受け継がれてきた伝統的林業の教えがあります。

このお陰で吉野の木は高い品質を誇っています。

今も健全に森林管理されている山がこれからも大切に守られていく事を願います。

一方で、森林所有者の世代交代や「山守」の高齢化そして後継者不足により、適切に管理できなくなっている山があるのも現実です。

それらの問題から目を背けず、開校されたアカデミーを応援し、見守り続けたいと思います。