南河内の山を訪れて

活動報告 2022.6.8

私たちが山を肌で感じ、木に関わる方の思いを知ることで、山とまちをつなぐという活動をこの2年あまり行えずにいましたが、今回は久しぶりに南河内の山を訪れました。当日の6月8日は梅雨には入っていないものの2日ほど前に降った雨で山道が心配されました。今回は、大阪府みどり公社の担当者ともく(木)の会のメンバーで(株)南河内林業が施業を請け負っている山を見せていただき、その後南河内の材を製材している(有)田中製材所に伺いました。本年度も大阪府の木材利用アドバイザー業務を委託されている私たちにとって大きな収穫となる見学となりましたので、ご報告いたします。

■山の見学
南河内の山はもく(木)の会でも何度も伺った吉野の山とつながっている山系です。最初に植える苗の数は吉野に比べると少ないものの、山の施業は吉野に似ているように感じました。10年目に高さ2mくらいまでを、25年目頃に高さ4m程度まで枝打ちをする。併せて間伐を繰り返し、80年生以上の丸太を生産しています。

施業とは植林から材の搬出までを管理し、山主の意向によって山を仕立てていく、長年にわたって山が健全な状態を保てるようにすることを言いいます。その中には作業道をつけるという基盤整理や鹿などの獣害を防ぐためのネットを張るというようなことも含まれます。

今回の見学も新たにつけられた作業道に添って行われました。山には元々水が麓や川に向かって流れる水道があるが、そこは作業道として利用してはいけない、作業道はつけてから1~ 2年は落ち着かないので気をつける、などの説明を聞きながら、作業道をつけた後間伐が行われ下草まで光が届くようになったところを見せていただきました。下草も充分に繁茂し、植物の多様性や、それを食べに来るであろう動物の多様性も感じられる状態です。

■製材所の見学
(有)田中製材所では主に原木市場を介さず、見学した山から搬出される丸太を製材しているとのこと。原木市場を介さないことで価格を抑えることができる 、また施業をしている状態を常に確認できるので品質が確保しやすいという理由からだそうです。(株)南河内林業が参画し、田中製材所が製材面で協力した大阪百年の森共同企業体が 、昨年行われた大阪府内産木材利用促進モデル整備等業務のコンペで 「大阪府咲洲庁舎 さきしまコスモタワー 1階フェスパ」で最優秀提案となり、実施にこぎつけています。山と製材所の近い関係が評価されたのかもしれません。

ここでは1本の丸太を余すことなく使い切るという観点で大切な「木取り」の説明も受けました。その後、実際に丸太を挽いていただけるとのことで「杉CUBE」の材料になる板をお願いしました。「杉CUBE」は杉を身近に感じてもらうために取り組んでいるさまざまなシーンに対応できるユニットですが、コストの見直しが現在の大きな課題です。現在は和歌山の材を使って制作していますが、ゆくゆくは、大阪・京都・奈良・兵庫、それぞれの材の特色を活かして制作するということも考えています。そのための試作を重ねるために、ここの材も使うことにしましたが、薄板に加工するにはもう少し乾燥させる必要がありますので、最適な時期が来るまでここで預かっていただき、組立方法も含めて「杉CUBE」を再構築していくことになりました。

■床の再生
無垢の床は経年変化で傷ついたり、ささくれだったりします。それを研磨し再生できるというのが無垢材の良さですが、自分たちが製材したフローリングを最後まで気もち良く使ってもらうために、製材所が再生する工程を担うという取り組みは初めて見ました。ペーパーで研磨する部分と研磨で出る木の粉を吸い込む掃除機のような部分との組合せで埃が立つこともなく表面が生まれ変わっていきます。国産材の利用が推奨されている昨今ですが、長い年月を掛けて育ってきた木をメンテナンスを行いながら、最後まで使ってほしいという製材所の思いを改めて感じました。