バスツアー「山の現状を知ろう!」 2008年11月2~3日

イベント 2008.11.2

都市近郊の山には伐ってもお金が残らない、後継者がいない、などの理由から荒廃している人工林が多く見られます。こんな山の現状を知るために、手入れされている山とされていない山、国際的な森林認証を取った山などを見て回ろうと11月2日(日)~3日(祝)、参加者15人+子ども2人で1泊2日のバスツアーに行ってきました。

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◆11月2日(日) -1日目-
絶好の行楽日和というお天気の初日、朝8時半に天王寺を出発し、一路奈良県室生村へ。室生村森林組合を訪ね、まず組合長さんから森林組合の現状についてお話を伺いました。その後、室生寺まで続く東海自然歩道を歩いて間伐体験をする現場まで向かいました。訪れたあたりの山は密植という方法がとられ、1haあたり8,000本から9,000本の木が植えられていました(通常は2,000本/ha)。これはその昔杉で樽をたくさん作っていた時代、つまりそれほど太くない木を大量に必要とした時代のつくり方の名残で、密植により木を真っ直ぐに生長させ、下刈り・枝打ちの手間を省く工夫をしていたとのこと。手入れが必要なことで単価が高くなってしまうという林業の仕組みそのものを変えないと、手入れもされずに放置される山が増え続けるという悪循環が断ち切れないとのことです。実際に歩いていると、山の持ち主が山をどのように維持しているのか、景色がガラッと変わるのでひと目でわかります。山の維持には欠かせない間伐の具体的なやり方を教わり森林組合の方の指導の下、チェーンソーを使って間伐の体験をしました。

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道の駅で昼食をとった後、重要伝統建築物保存地区となった大宇陀の街並を見学し、宿泊先へと向かいました。

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◆11月3日(祝) -2日目-

日本で初めてFSC認証を取得した速水林業を訪問し、オーナーの速水亨氏にお話を伺いました。

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 FSC認証とはFSC(森林管理協議会)という国際的な認証機関が、森林が適正に管理されていることを評価し認定するもので①持続的に木材生産ができているか ②生物の多様性が保全されているか ③災害防止に貢献しているか ④地域社会への長期的かつ多角的な貢献度、などがチェックされます。現在は30ヶ国以上,1800万haを超える森が認証を受けているようですが、そう簡単に取得できるものではありません。自然とも人とも共生できる人工林の可能性を模索しながら確立したシステムがあってこその認証であり、国際的な環境保全まで視野に入れた「環境管理の方針」には林業の未来を担うプロとしての姿勢を感じました。

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         実際に歩いてみると、山は非常に明るくて、針葉樹だけではなく広葉樹も生えており、下草も大きく育っていました。おそらくこの山に住む生き物たちにとってものびのび暮らせる良い環境になっているのではないでしょうか。

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午後からは、蜜ロウと荏ゴマ油から作ったワックス等を販売している「小川耕太郎&百合子社」を訪ねました。元は製材業を営んでいたというご主人ですが、山と海という自然の中で暮らすうちに、自然の恵みを集めて販売したいという思いが沸いてきたとのこと。まずは無垢の木の風合いを損なわない塗料を提供したいということから、蜜ロウと荏ゴマ油に着目し調合に試行錯誤を重ねて「蜜ロウワックス」を開発されました。蜂の巣からワックスに至るまでの製造過程を、現物を見ながら伺いました。「口に入れても、顔に塗っても大丈夫」というこのワックスは、ある意味贅沢ですが、これに勝る安全なものはないと実感しました。自然界に普通に存在するものから作られた所以ですね。

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最後に立ち寄ったのは紀南ツアーデザインセンターです。地元の森林王が明治時代に建てたという家が、熊野の自然や観光をPRする拠点に利用されています。山の違いを肌で感じることができ、自然の恵みを満喫することができたた2日間でした。