丹波篠山のお寺の山と渓谷の森公園の施設見学 2008年7月6日

見学会 2008.7.6

もく(木)の会メンバーの中川が丹波篠山のお寺(龍蔵寺)の本堂の設計を依頼されました。住職の希望で自山の木を使いたいとのこと。昨年から木を伐り出し、現在製材所に寝かせてあると聞き、龍蔵寺と渓谷の森公園を見学することになりました。

渓谷の森公園は地元の材で地元の大工さんが独自の技術を使った建物があり、野外学習施設やコテージ、オートキャンプ場などの宿泊施設をそなえた公園です。施設の建物はコンペを行い、地元の設計士・才本氏の設計が採用されました。

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当日は、設計者の才本氏と兵庫県立丹波年輪の里の喜多氏の案内で建物の特徴などを説明していただきました。上の写真は、コテージの屋根に使用された「扇垂木」です。この技術は丹波地方独特のもので、大工さんによって垂木を地面で組み立ててから屋根に乗せるものや、直接屋根に垂木をならべていく方法を取った人もいたそうです。右の写真は、耐力壁としても使用できる面格子壁で、構造設計士の田原氏が考案したものです。公園の総合事務所に使われていました。その他、野外研修施設には地元の石を束石にした「転石抱き柱」や「4本ねじれ柱」も見られました。

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案内をして下さった才本氏が、時間があれば是非寄ってくださいと、ご自身の設計事務所に連れて行ってくださいました。ここは以前郵便局として使われていた建物で、取り壊されマンションが建つ予定だったのですが、才本氏が買い取り自身の事務所として見事に再生されていました。

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才本氏は現在町屋再生に積極的に関わっているとのことで住宅部分は昔の生活の場を極力残し、カマドや囲炉裏も復元されていました。この場所で、有名な左官職人・久住氏のワークショップも行われたそうです。外壁はベンガラが塗られていました。

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山の由緒ある料理屋さんで昼食をとり、いよいよ中川が設計することになった龍蔵寺に向かいました。龍蔵寺は開祖が西暦645年という歴史のある天台宗のお寺です。先代住職の植林のお陰で、自山の木を使って本堂が建てられることになりました。

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龍蔵寺に着くとすぐに作務衣姿の住職が本堂再建のために木を伐採した山を案内してくださいました。住職は山や木だけでなく植物への造詣も深く、山に生えているいろいろな植物の説明もしてくださいました。木の伐採から製材、建築までを請け負った地元の藤本林業所の社長さんは、今回の伐採で密になりすぎていた森が明るくなった。他にも間伐が必要な山がたくさんあるようだが費用的に難しそうだ、と話していました。また、社長自らが山に入り、この木は本堂の通し柱に使える、この木は間柱に、と目利きして伐採していった、とのこと。工場に持って帰り製材してみて、自分の目にほとんど狂いがなかったと自画自賛していらっしゃいました。

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この写真は、裏の山が崩れ本堂が倒壊したために空地になっているところです。左側に江戸時代に建てられた観音堂、右側には茅葺きの客殿が建っており往時の隆盛が偲ばれました。今はテントを張って休憩所にしている場所で武庫川の源流の湧き水で入れたコーヒーとお菓子をいただき、深山の空気を楽しみました。

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何度かに分けて伐り出された木の中ですでに柱として製材されているものがあるということで、藤本林業所にお邪魔しました。お寺で使用する材は、径も大きく、長いものが多いので県内の乾燥工場では乾燥できるところがありません。林業所である程度野積みにされ、少し乾いてきたら屋根のあるところに移動している、とのこと。山から木を伐り出しはじめてから1年。自山の木で地元の山師が伐り出し、地元の林業所で製材し、地元の工務店が建てる、まさに地産地消の建築が始まっています。一般の家ではなかなか出来ない試みですが、住職の熱い想いと藤本林業所、設計事務所の努力で一歩ずつ実現に向かっています。完成したら、是非もう一度訪れたいと思っています。