大津壁の見学会  2007年5月27日

見学会 2007.5.27

奈良の明日香に、左官屋さんの自宅を新築する事になり、石油から生まれた商品 や接着剤をほとんど使用せずに杉と桧だけで住まいを建てることに挑戦する事になりました。
なかなか引き受けてくれない大工さんを説得し、やっと着工したのが昨年の春でした。 何度か接着剤を使用しないゆえのトラブルがありましたが、その都度大工さんと話し合いを し、工事のやり直しも行って、やっと今年の3月に本工事を終了しました。いよいよ壁の 左官工事になり、全ての壁を大津壁でいくことになりました。

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大津壁とは、昔からよく行われてきた手法で、のりを使わず押さえで仕上げていく方法です。
手順は以下の通りです。
1.荒壁 :木舞(こまい)下地(天然の割竹・小枝などを格子状に編み、骨組みとする)の上に荒壁と裏返しで
下地を塗る。
2.塵回り :塵切れ(塵(ちり)…土壁と柱などとの接する部分)を防ぐための工法。
のれん打ちやひげこ打ちによるものがあるが今回はのれん打ちを行った。
3.中塗り :土・藁・砂を混ぜたものを塗っていく。
4.上塗り :中塗り面を完全に乾燥させてからまず一度目の上塗りとして
ふのりを薄めたもの+消石灰+すさ+砂を塗る。さらに仕上げに水+消石灰+すさ+砂を塗る。
今回は浅葱(あさぎ・うすい緑色)土と黄土を混ぜて色を作った。
5.大津磨き :水引具合を見計らいながら、こなしゴテでコテ抜けがなくなるまで何回も繰り返し伏せこむ。
これによって光沢が出てくる。

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大津磨きは昔から1人の職人が一日あたり一坪くらいしか仕上げられないと言われてきました。身近にある材料を使い、惜しみなく手間をかけて仕上げたようです。現代では失われてしまった、ゆったりとした時間の流れ中で生まれたものだと思います。 参加者の皆さんは、仕上がった大津壁を見られたことはあっても、その工程を見られるのは初めてのようで興味深げに職人さんに色んな質問をされていました。
見学の後、おいしいスイカとケーキをいただき、無農薬の野菜をお土産に散会となりました。
この日のお天気と職人さん達に感謝しながら明日香を後にしました。