●叡智の杜●石川県小松市日用町を訪ねて(2015年3月9日)

見学会 2015.3.9

白山と日本海を臨む石川県小松市の里山地域に位置する日用(ひよう)町に 叡智の杜(Forest of Wisdom)はあります。江戸時代から日用杉を産業としてきたこの町は年間を通じて湿度が高く、副産物的に多様な「苔」が自生してきました。この苔庭と初夏にはホタルが舞う小川と田園そして古民家は町の誇りであり、日本の美しい自然と文化でもあります。しかし、里山地域の過疎、少子高齢化、農林業の衰退が進み、日用町の住民だけではその継承が困難になりつつあります。そこで、国内外の人々の叡智を集め、この大切な資源を次世代に引き継いでいくための仕組みづくりを目的として「叡智の杜プロジェクト」を3年前にスタートされました。

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 初めに案内された苔庭に足を踏み入れると、その圧倒的な苔の美しさと静謐な空気に一瞬息を呑みました。人が杉林に手を入れる事で存在する、日向、半日陰、日陰が約48種類の多様な苔を育てます。苔は根が無く体全体で光合成して生きている生態系の最初の生き物です。この白山一帯の地層が日本の中で一番古い地層帯であることとも関係があるのかもしれません。

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次に日用神社を通り抜け、最近改修を施された古民家を訪れました。日用杉とこの地の特徴の一つである赤い瓦屋根で構成され、内装のじゅらく壁には金沢で高貴な色として用いられてきた群青色が使われています。この群青色は加賀藩主前田齊泰が建立した「成巽閣-せいそんかく」の内装に使われたことが始まりとされ、今日金沢のあちこちで目にする色となりました。

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この魅力的に改修された古民家は、今はまだ本格始動されていませんが、これから新しい仕掛けづくりに利用したいとの事でした。
「叡智の杜プロジェクト」には建築家の隈研吾氏らがその活動に共鳴し、すでに仕掛けを始められています。このプロジェクトを推進し今回案内頂きました桂木氏は、この地は全ての自然の恵みが地産地消できる魅力ある場所 ―気候風土に根差した山・海の豊かな幸、工芸・茶の湯の文化等―皆さんの叡智をお借りして、この美しい自然と共に生きる生活文化を継承してゆきたい、と力強くお話しされました。

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ここは、もう一度訪れたくなる場所でした。次は苔が最も美しく映えるという、雨の降った翌日の晴天の光と影が織りなす苔庭を是非見たいと思いました。