木材活用の現地視察研修会
11月22日(金)にみどり公社主催の第3回森づくりサポート研修会が開催されました。今回は座学ではなく、木材活用の取組みを行っている市町村を視察し、現地の職員の方などの生の声をお聞きするバスツアーです。
私たちは市町村、大阪府の職員の方と共に同行し、道中バスの中で「日本の木のこと山のこと」と題し、木や山のことを知ってもらうための研修を行いました。山の現状や木を使うことが環境に寄与していること、そして無垢の木と加工された木の違いなどを説明しました。また、無垢の木を3枚ずつ配って、それぞれの木の名前を当ててもらうクイズなどで木の目や匂い重さを感じてもらい、木の特徴や使い道、そして無垢の木の良さをお話しました。そして最初の目的地である多賀町中央公民館『多賀結いの森』に到着する前に建物の概要や設計者の意図などをお話しました。
現地では多賀町の職員の方に迎えて頂き、公民館が建設されたいきさつについて詳しくお話して頂きました。
建て替えという方向が出来たH23年から基金をつくり、検討委員会にて、多賀町は豊かな山林を有する地域で、その資源の活用やモデルとなる建物という位置づけで取組みを行い、設計者コンペで176点の応募から選ばれました。
木造平屋建ての公民館・集会場・障害福祉サービス事業所という用途を有する複合施設で多賀町産の木材で建築され、2019年4月に開設しました。たくさんの片流れの屋根が連なった外観は、多賀の山並みに調和し、内部は空間の変化に富み、居場所によって違う自然を感じられる空間になっています。
そしてこの施設を町の人たちと共に作るというプロセスも大切にし、それが今後の運営に関わっていくことにつながっているとのことでした。
また、森林組合の方からは設計段階からの木材調達や加工・納入等についての説明があり、木材は集成材等に加工せずに製材された材で、サイズも製材所で加工可能な寸法・長さのものを金物で繋いで対応するような設計がなされています。内容が盛りだくさんでもう少し時間が欲しいくらいでした。
午後からは東近江市役所で東近江市の取り組みをお聞きし、展示されている木製品を見学させて頂きました。
東近江市の市域面積の約56%を占める森林の約3割が人工林で大部分が間伐の時期にあり、その他の広い面積を占めている広葉樹の活用も求められています。これらの森林資源の有効活用を図るため「東近江市木を使うプロジェクト推進協議会」が結成され、地元産材を活用した椅子や机などの家具やおもちゃなど木製品の生産などの取組みが行われています。多賀町でも東近江市でも県産材を使うという明確な目標を目指しているということを感じました。
最後は事前に建物の概要だけをお話しし、自由視察のラコリーナ近江八幡へ向かいました。
建築家・建築史家の藤森照信氏の設計で、芝に覆われた草屋根やクリの木を製材せずに自然のままで使用し、素材にこだわりユニークな空間構成で多くの人が訪れています。
駆け足で滋賀県内を巡り、予定より1時間遅れの帰阪となりましたが、充実した一日を過ごして頂いたのではと思います。森林環境譲与税初年で、今後に向けての調整段階のようなところもありますが、この研修会が各市町村における施設の木造化・木質化に役立つものであることを願っています。