左官工房見学会 2011年5月21日

見学会 2011.5.21

5月21日(土)、以前しっくい塗り体験セミナーで講師をお願いした萩野氏の工房を訪れました。 工房には左官材の色や粘度を確かめるために塗られた壁面があり、それぞれの材料や塗り方について萩野さんが説明してくださいました。

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私たちが訪れた日は、ちょうど「フノリ」を釜で炊いているところでした。 漆喰に粘度を持たせるために、化学的な接着剤ではなく海藻を使用している、という説明がありました。

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これが、炊いていた海藻です。「ぎんなん草」と呼ばれ、ふつうの「フノリ」よりも粘度が高いとのこと。 東北の三陸沖から北海道にかけて採れ、日高産のものが品質が良いようです。なんだか昆布みたいですね。 袋に入っていた「ぎんなん草」。昆布というよりは大きなわかめといった感じでした。産地によって色が違い、北海道のものは黒っぽい色だそうです。

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ぎんなん草を溶かした液体を漉しているところです。用途によって、漉器の目の粗さを変えます。 漆喰に使うときは、上に目の粗いものを置き、その下に目の細かいものを置いて海藻のクズが入らないようにします。 漉したあとのぎんなん草は肥料として土に埋めます。

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土や漆喰のツナギとして麻のスサを入れます。 こちらは粗いスサ。 こちらは細かいスサ。 こういった材料はすぐに入れられるよう加工されています。 近畿地方でスサを生産しているのは、兵庫県に1社のみになったそうです。 兵庫県には姫路城があり、つねに需用があるからです。

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これは、古い家の土壁に新しい土を混ぜて寝かせているところです。 古い土壁を混ぜた方が、割れが少ない、とのこと。何度でも再利用できる究極のリサイクル材料です。

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2階の倉庫に上がり、左官材に色をつける土を見せてもらいました。 写真は「浅黄土」と呼ばれるもの。写真ではグレーに見えますが緑色を出すために使われる土です。 以前は畳表の泥染めの材料として使われ、淡路島産のものが有名です。

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これは「黄土」。同じ「黄土」でも取れる場所で微妙に色や粘度が違います。萩野さんは水を混ぜて寝かせていたものを私たちに見せてくださいました。 これは、「錆聚楽(さびじゅらく)」と呼ばれる土を作るために混ぜる小さな釘です。これを塩水に漬けて錆させ土に混ぜると、茶室で珍重される錆聚楽ができるのです。

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コテのいろいろ。 右端の刃の薄いコテが漆喰壁の仕上げに使うもの。 左に並んでいる小ぶりのコテは刃が厚い聚楽壁用のコテ。聚楽壁はコテの重さを利用して仕上げるのだそうです。

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割り箸のようなものに麻布が付いているのが柱と土壁の間にできる亀裂を防ぐための「ノレン」。 藁の先にクギがついていて束ねられているものは「ヒゲコ」。土壁が落ちるのを防ぎます。 壁が仕上がってしまったら見えなくなってしまう材料を見ることができました。

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これは、茶室で使う炉の下塗りが終わったところ。この状態で置いておき、注文が入ったら上塗りをして仕上げます。 常に炉の下塗りを在庫しているのはさすが京都の左官屋さん、と感心しました。 今回の見学会は、もく(木)の会のメンバーだけでなく会員さんやお施主さんも参加し、いろいろな質問が飛び交いました。 普段見ることが出来ないものが見られ、とても面白かったようです。