働く女性とその家族が暮らしやすい国産材を使った家づくり 2008年2月23日

セミナー 2008.2.23

2月23日にドーンセンターで「働く女性とその家族が暮らしやすい国産材を使った家づくり」というタイトルでタイアップセミナーを行いました。
今回はもく(木)の会の事務局の司会によりメンバーである設計者とともに、住まい手で奈良女子大学生活環境学部住環境学科教員の藤平さんに、インタビュー形式でお話しをして頂きました。

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Q.住宅の設計に関して全体的にはどんな要望を出されたのでしょうか。
A.設計のコンセプトとして”維持管理しやすい住まい”をお願いしました。自分が住居管理にかかわっているということも関係していますが、自分たちで管理しやすい、できる→愛着をもつ→手入れする→長持ちにつながると考えています。

Q.ご自身が働いているということで、特に希望したことはありますか。
A.夫も家事をするので、誰でもが使いやすいようにシンプルな空間を望みました。家事全般をある程度まとめてできるような間取りにしてもらい、洗濯では洗濯物を運ぶ、洗う、干す、たたむ作業ができる家事室を、調理では食品の搬入、保管、調理作業、作る、片付ける、ごみ捨てなどがスムーズにできるようなキッチンをお願いしました。家事室は、洗濯を夜のうちにすませ、室内に干せる場所として活用しています。また、家事室は使用頻度も高く湿気の発生も高いので、留守中でも換気できるような窓の設置を希望しました。壁全面に杉を貼ったので、洗濯物がよく乾くような気がします

Q.この家は1階も2階も床はすべて杉ですね。
A.家族は、家に帰ったら大抵素足で過ごすので、木材のなかでも断熱性の高いスギが適当だと思いました。スギ材は暖かみがある、一方で傷がつきやすいと言われています。そこで、圧密スギ材(表面だけを熱圧処理をして,表面を硬くしたもの) も使い、圧密の効果、圧密でないとどんな感じなのか体感したいと思いました。無垢の木材を使用したい、しかしメンテのことを考えると、と言われる方は多いと思います。私たちにもこのような思いは少しありました。そこで、1階は圧密スギを、階段・2階床は無垢のスギ材を用い、使用場所ごとに求めることも異なるので、かえてみました。1階の水回りは水こぼれにより圧密材がでこぼこになるのが嫌でしたので、塗料を塗って、気軽に使えるように考えました

Q.木の家で1年間生活されて、いかがでしょうか。
A.完成した家で生活を初めて、ようやく慣れてきた、自分たちのリズムで生活できるようになってきたというのが実感です。木の家の快適性など色々なことがいわれていますが、実際どうなのか。自分たちの生活にとって良いところ、少し気をつけて生活しないといけないことなど、なんとなくわかってきたように感じています。
スギ床材や木製建具の使用にあたり、私たちの感覚がすっかり衰えている(もともと身についていなかった)ことも実感しました。新建材に慣れきっていて、ちょっとした力加減がわからなくなっていることです。力を入れすぎて建具が大きな音をたてたこと、知らないうちに椅子などの角をたてて、床に傷をつけていること、ものを持ち上げないで引きずっていることなど・・・このような暮らし方が、床材等の傷の原因となっていました。どんなことにも強い新建材に慣れきってしまい、必要以上の力をかけていたことに気がつきました。今では適当な力加減が、少しは身に付いてきたように思います。(時々失敗しますが・・)
住まいづくりは、家が完成して終わりではなく、完成と同時に、また、あらたなスタートが始まるのだと思います。新しい住宅そのものを含めて、施主と設計士、施工者がかかわっていくことが、大切だと思っています。

以上は抜粋ですが、計画からのコンセプトや要望、実際にお住まいになられて1年を迎えられての感想や住環境の立場からのお話など、設計者としても非常に興味深い内容でした。

次回、視点を変えて再度セミナーを開催する予定をしています。