セミナー「杉が住環境を変える~きれいな空気・心地よい眠り~」 2009年1月18日

セミナー 2009.1.18

当日は、少し肌寒い小雨の中、115名という大勢の方々のご来場がありました。

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<いま、森林を活かす時代>
我が国は、森が国土の約7割を占める世界有数の森林国ですその6割を占める人工林の約半数が戦後に植林した森林で、今その45年物の森林を活かす時代です。地球環境問題において森林には大気の汚染を浄化する機能があり、二酸化炭素削減による温暖化抑制につながるとして、世界の国々と約束した「京都議定書」では、我が国は森林に炭酸ガス削減の大半を課しています。しかし現在、国内の森林資源を活かせず山が荒れています。今後 森林整備と国産材の有効活用を行い、地球環境の保全と持続する木材資源の獲得が重要な課題となります。

<スギ材の大気浄化機能の開発>
東大寺正倉院ではヒノキの校倉内のスギの唐櫃に数々の御物が収められて、1250年間大変良好に保存されています。成瀬正和氏の正倉院の庫内と櫃内の温・湿度調査でも、外気に比較して大変すぐれた調温・調湿機能と浄化機能があること、それは伐採され「木材」になってからも、長期にわたりその優れた機能を持続し発揮し続けることが判りました。この度、2種類のスギ材を使用し、二酸化窒素、オゾン、ホルムアルデヒドなどの大気汚染物質の浄化能力を評価したところ
①スギ心材に大気汚染物質を浄化する能力が大きいこと
②スギ内部の水は安定した大気汚染物質浄化能力を持つ
③板目面より木口面における効果が大きいこと
などが明らかになりました。しかし木口材では建材としては実用的でないため、板目材や柾目材に「スリット」や「V溝」加工等を施すことにより、木口面を露出する加工を加えたものについても上記と同様に評価しました。その結果、大気汚染物質の浄化能力だけでなく、調湿機能もまた大きく向上することが明らかになりました。

今後、木材の「人」への生理・心理作用についても、各専門領域と連携し、「人の健康と住まいのあり方」について取り組んで行きたいと考えています。

2.杉で作る健康空間
NPO法人もく(木)の会 藤田 佐枝子

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<杉の機能と健康空間の関係 >
① 空気浄化作用
健康な身体を維持するためには、私たちは新鮮でかつ大量の空気を必要とします。空気の量は1日に約20㎏とも言われています。あるIT企業オフィスに「杉」の会議室を作りました。その会議室は「落ち着く」「頭が冴える」「アイデアがよく浮かぶ」と言った評価をいただきました。
② 調湿作用
冬の過乾燥のマンションの寝室全面に杉を貼って、子供のぜんそくが治った事例等々を挙げ、杉の高い調湿作用について説明があり、また、湿度が30%を切るような過乾燥ではインフルエンザウイルスの生存率が高まるなど、健康にとって室内湿度管理がいかに大事であるかを説明されました。

<杉の健康的な使い方(施工例を通して)>
改装のご要望で多いのはリビング、寝室、子供部屋ですが、狭い押入れや外から室内に入る空気を良くするためにベランダなど外部にも積極的に使っていただきたいと思っています。
・床は簡単に「カーペット」感覚で施工することが可能です。
・壁は「腰壁」あるいは「壁の一面又は全面」に施工しますが、施工が難しい場合には建具や家具等で代用が可能です。
・天井は見た目にやさしいなど視覚的に効果があります。

<健康仕様の注意点>
・スギ材は低温乾燥材を使用すること
・接着剤に頼らない施工をすること
・仕上げをする場合は自然塗料を使用すること
・日常のメンテナンスは水拭きを心がけること

<杉の良さを住まいに生かす施工例の紹介>
スギ材を内装に取り入れ、家族全員の体調が良くなり、日常生活への意欲が増した事例紹介で入居者の立場から2件のご入居感想報告がありました。

【感想】   もく(木)の会メンバー 山本 堯子

厳しい世界状況の中で、我が国が世界に誇れる 「持続・循環可能な森林資源」 が 地球環境問題の解決になる大きな可能性を持っていることを強く感じます。スギを通して”自然のしくみ”の偉大さに感嘆するばかりです。この日本固有のスギで心身共に気持ちのよい空気づくりに、川下にある もく(木)の会 は女性建築士の立場から発信いたします。